日本は今後、一気に人口が減少すると予測されている。2065年頃には65歳以上の人口の割合が、社会保障費を負担する側の割合より多くなり、国が維持できなくなる。人口減少が、国債暴落の引き金になりかねない状況である。債務が増え続けるにもかかわらず、それを返済する人が減っていく以上、国債デフォルト、ハイパーインフレが起きてしまうからだ。
安倍首相は「女性を戦力に」という成長戦略を掲げている。2013年には「高年齢者雇用安定法」の改正により、60歳の定年後も希望者全員を雇用することが企業に求められるようになった。しかし、女性と高齢者を最大限に活用しても、2030年には労働力人口が292万人も不足する。労働力人口の減少スピードが速く、労働力不足をカバーできないのだ。こうした負のシナリオを回避するには、出生率改善と移民受け入れという二つの対策が求められる。
日本の合計特殊出生率は、「1.41」と先進国の中でも最低レベルである。世界に目を向けると、スウェーデンやフランスは出生率を「2」までリカバリーさせている。例えばフランスでは、子どもを産めば産むほど所得税が大幅に下がり、多額の育児給付金が支払われる。また、「家族関係政府支出の対GDP比」は日本が0.96%であるのに対し、フランスは3.2%、スウェーデンは3.76%である。少子化を解消している国では、予算を割いて、手厚い育児支援を行っているのだ。
欧米では婚外子の出生割合が高まっており、フランスやスウェーデンにおいては、二人に一人が婚外子である。一方、婚外子の割合がたった2.2%である日本では、2013年の民法改正によって婚外子の相続差別はなくなったものの、社会的な差別はまだ残っている。出産前に「籍を入れる」ことが暗黙の了解になっており、戸籍が出産の障壁になっているのだ。
著者は、婚外子差別と少子化を助長する戸籍制度を撤廃すべきだと考えている。住民票がありながら、時代遅れの戸籍を維持するメリットはない。2016年には「マイナンバー」の運用が始まるが、徴税、年金管理という役所側のメリットばかりが重視されている。ユーザー側のメリットが軽視されているうえに、マイナンバーを悪用される場合の手立てが不足している。そこで著者は、国民一人ひとりが生まれた瞬間から個人情報をすべてデータベース化し、国家が一括して管理、保護するという「コモンデータベース法」を提言している。
日本の移民比率は「1.1%」であり、世界的に見て非常に少ない。出生率上昇が見込めないならば、移民を受け入れるしかない。アメリカでは、世界から年間約100万人の移民が流入しており、持続的成長を支えている。日本も、外国人留学生を育成し、日本の文化を学んでもらって、その後国内で働いてもらうことを検討すべきだ。
日本政府は、人手不足を解消するため、急きょ外国人労働者の活用に動いたが、特区や足りない業種のみに付け焼刃的に対応するのではなく、中長期的に対応するべきである。円滑に移民を受け入れるためには、著者が提示する「3つのステージ」の移民政策が有効となるだろう。
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