2014年は「国民国家とは何か」が問われた年だった。国民国家の定義は、明確な国境があること、統治のための憲法と統治機構が存在すること、自分を守る軍隊と自国の通貨を持っていることである。この定義に波紋を投げかけたのは、スコットランド独立を問う住民投票だった。独立は果たされなかったものの、自治権や徴税権などの大きな権限をイギリスから移譲された。これに触発され、スペインのカタルーニャや、デンマーク領のフェロー諸島、ハワイなどでも独立運動が盛り上がりを見せている。また、ウクライナでは新ロシア派と新欧米派の対立が続いており、世界は「地域国家」乱立の時代に向かっている。
最もセンセーショナルな形で国家の定義を問いかけたのは、「イスラム国」である。イスラム国は軍隊を持っているが、明確な国境も憲法もなく、適宜都合のいい通貨を使う。イスラム国にとって参考になるのは、パレスチナ自治政府がたどってきた歴史である。元々テロリストだったアラファトはPLO(パレスチナ解放機構)をつくり、長い努力の末、パレスチナは国連から「オブザーバー国家」として承認されるに至った。イスラム国も同様の道をたどるかもしれない。
2014年の日本経済の状況を見ると、アベノミクスによる「実質GDPの2%持続成長」という安部政権の目標は実現からほど遠い。なぜ実体経済が成長しないのか。増税によって物価が上がったものの、実質賃金が下がり続けているためだ。また、安部首相は雇用が増えたと言うが、実際には正社員は減り、非正規社員だけが増え、高所得者と低所得者の二極化が進んでいる。さらには、円安により円の競争力が下がり、円安になっても、海外進出した日本企業は戻ってこないのが現状だ。
次に、アベノミクス「三本の矢」の効果を検証しよう。「金融緩和とインフレ目標という第一の矢については、低金利にもかかわらず預金が増え、一向に貸し出し増加につながっていない。第二の矢の「機動的な財政政策」も、投資効果が出ていない。技術労働者が不足しているため、いくら公共工事を増やしても、工賃や資材の高騰を招いてしまう。そして、第三の矢の「民間投資を喚起する成長戦略」は、バラマキ政策にすぎない。地方創生や女性の社会進出という政策を掲げているが、具体的な中身は語られていない。そして、成長戦略の効果発現には10年、15年の年月がかかるにもかかわらず、首相や日本のエコノミストから、長期的な視点が抜け落ちている。20世紀の市場を支配していた経済学が通用しない今の日本において、アベノミクスはことごとく空振りしている。
日本の企業や家計は潤沢な資産を保有しているのにお金を使わず、低金利でもお金を借りない。著者はこの状況を「低欲望社会」と名付けた。なぜお金を使わないのか。その理由は、日本人が将来の生活設計に対して悲観的だからだ。老後の不安から、将来への備えとして貯蓄に力を入れるのである。特に30代の人たちは、10代の頃から長期不況に身を置いてきたため、「お金を使おう」という気持ちが萎縮しているのである。
また、日本の経営者の多くは投資への欲望を失っており、目先の利益を追いかけてしまっている
。2015年、政府・企業・個人がすべきことをいくつか取り上げてみよう。
まず、政治は新しい国家構成の単位として「道州制」を導入すべきである。
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