加算混合の発想(2015年新装版)

硬直思考からどう脱するか
未読
加算混合の発想(2015年新装版)
加算混合の発想(2015年新装版)
硬直思考からどう脱するか
未読
加算混合の発想(2015年新装版)
出版社
masterpeace
出版日
2015年02月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

経営思想家の大家であり、起業家育成の第一人者でもある大前氏。本書は、1980年に発刊された同書に著者インタビューを追加収録した2015年新装版である。

「一つの色(=視点)だけで見て、やたらに色を増やしていくのではなく、異なる角度から違う光を加えてみる」。これを筆者は「加算混合の発想」と名付け、この重要性を主張する。本書では、『企業参謀』を皮切りに企業経営戦略家として評価を高めていった当時の大前氏が、企業戦略や国際関係、社会問題を題材に、多様な角度から問題の本質を見極め、柔軟に対処する思考法を披露する。日米貿易摩擦などの国際情勢は刊行当初のものが掲載されているが、一つ一つの提言を導き出すまでの切り口の斬新さや思考法の汎用性は、現代でも色あせないどころか、多様性を増す現代にこそ重要な「硬直思考を打破する」ための視点を与えてくれるはずだ。こうした「多面的なモノの見方」は、政治や経済、企業が抱える問題の解決策を考えるときにも、人生設計を行うときにも重宝する。身近な風景から思いがけない発想を生み出すプロセスには目から鱗の連続で、読めば読むほどぐいぐいと引き込まれることは間違いない。

また、決断力を高める思考法を磨くには、flierで既に紹介した『企業参謀 2014年新装版』や『Strategic Mind 2014年新装版』を併読されることをお薦めする。

ライター画像
松尾美里

著者

大前 研一(おおまえ けんいち)
1943年、福岡県若松市(現北九州市若松区)生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京工業大学大学院原子核工学科で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。経営コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー日本社長、本社ディレクター、アジア太平洋地区会長等を歴任。94年退社。96~97年スタンフォード大学客員教授。 97年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院公共政策学部教授に就任。 現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長。オーストラリアのボンド大学の評議員(Trustee)兼教授。また、起業家育成の第一人者として、05年4月にビジネス・ブレークスルー大学大学院を設立、学長に就任。2010年4月にはビジネス・ブレークスルー大学が開学、学長に就任。02年9月に中国遼寧省および天津市の経済顧問に、また10年には重慶の経済顧問に就任。04年3月、韓国・梨花大学国際大学院名誉教授に就任。「新・国富論」、「新・大前研一レポート」等の著作で一貫して日本の改革を訴え続ける。著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    硬直した状態を打破するには、一つの色(=視点)だけで見て全部を否定したり肯定したりせずに、異なる角度から違う光(=視点)を加えてみる「加算混合の発想」が重要である。
  • 要点
    2
    ごくありふれた物事を自らの眼で観察して「なぜだろう」と考えるようにすれば、観察が鋭くなり、成長につながる発見が生まれる。
  • 要点
    3
    所定の目的達成が難しい場合には、代替案が重要になる。目標と具体的な代替案の間で何回かの試行錯誤を行い、両者を満たす案を選択するというアプローチが望ましい。

要約

今、硬直思考から抜け出すには(2015年新装版発行にあたって)

加算混合の発想の重要性
fotonehru/iStock/Thinkstock

日本人は、意見の違う人が混ざり合って真実を見極めようとする習慣に乏しく、意見がモノトーンになりやすい。まるで、絵の具の色を混ぜていくとやがて黒になる「減算混合」のようである。こうした思考でいると、色々な意見が混在しているにもかかわらず、一つの方向へ集団として流れてしまう危険がある。

日韓関係を例にとろう。日本の政治家は一方的に韓国と対立する方向へ追い立てる向きがある。一方、韓国でも、日本のことを褒めるとバッシングを受けるといった過剰反応が繰り返されている。日本人は、過去の侵略問題について謝るべきときは謝り、誤解があれば誤解を解き、そして、日本を嫌いになるように仕向ける極端な教育ではなく、別の見方も教えてほしいと地道に対話していかなくてはいけない。

そこで大事になるのは、全部を否定したり肯定したりせずに、異なる見方を自ら進んで導入する「加算混合の発想」である。異なる色の光を重ねていくと、やがて透明になる現象のように、一つの色(=視点)だけで見て、やたら色を増やしていくのではなく、異なる角度から違う光を加えてみるという発想だ。

外交 戦争や貿易戦争で投げかけられるのは原色の絵の具だ。相手の色とぶつかって暗黒色となり、ついには自らの色さえ識別できなくなってしまう。日本だけが正しいとか一方的に誤っているということはあり得ない。こうした透明な心で冷静に話し合えば、中間色にたどりつき、異国間の緊張は著しく緩和すると考える。

【必読ポイント!】 企業戦略への適用

発見―成長の最大要因

情報化時代に入り、観察は非常に貴いものになっている。心の眼が閉じた人は、新しいものや奇抜なものにしか目を留めない。だが、なぜ二人の人間が合意し、反対しあうのか、なぜ企業集団の中で閥ができるのかといった、ごくありふれた領域においてこそ、未解明の問題が山積しているといえる。例えば、教育制度からも日本社会の矛盾が見える。義務教育は能力差、個人差がないという前提で組み立てられており、学習内容も画一的であるが、社会人になれば職業は千差万別だ。

自然界の事象や人間の営みを「おや、なぜだろう」という心で見続けていると、観察が鋭くなり、「発見」につながり、データやその分析に対しても虚心坦懐に臨むことができる。会社の業務や市場動向、競合の動き、社会構造の変化などにひそむ「意味」に気がつき、対策を打てるようになってはじめて、「発見」が役立つようになる。

大きな成功を収めている日本企業は、世の中の流れを見極め、自社と競合の強さ、弱さを見抜いて、「ふとしたきっかけ」からつかんだ事象の発見を実践に移しているケースが多い。物事を自らの眼で見て、創意工夫を実行できる人材がいる会社は、いくらでも成長の機会が転がっているといえる。

置換―自由競争の醍醐味
Torsakarin/iStock/Thinkstock

われわれの身の回りから多くの日常品が消え去り、常に置換が起こっている。置換の特徴は、同じような商品ではなく、全く別次元のものに置き換えられる場合も多いことだ。置き換えられる側は、単価を上げて収入を確保しようとするため、これが客離れをいっそう促してしまう。

同様に、人件費の上昇も置換を加速する。「時間」の価値が高まるため、より速く移動できる交通手段に代替される。これこそ自由競争社会の醍醐味であり、事業拡大の機会は尽きることがないという見方もできる。

自由経済の真の良さは、人間の「もうけたい」「楽をしたい」という願望が、

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要約公開日 2015.04.30
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