ブランド「メディア」のつくり方の表紙

ブランド「メディア」のつくり方

人が動く ものが売れる編集術


本書の要点

  • 老若男女に浸透しているヤフー・ニュースは、150の配信元からのニュースを選びぬいてつくられている。目を引くニュースを入口に、大切なニュースを知ってもらいたいという思いで構成されている。

  • ヤフー・ニュース以外のネットニュースは、PV数獲得のためにさまざまな工夫をしてきたが、体制チェックの役割はじめ、それ自体の提供できる価値を追求する道中にある。

  • 誌面の先の、市場との連携まで編集する「メトロミニッツ」、「ちょっと先」を行くストーリーを懸命に探り、雑誌の世界の開拓者であり続けている「ブルータス」。紙メディアの可能性の模索も続いている。

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【必読ポイント】ヤフー・ニュースのつくり方――奥村倫弘(ヤフー・ジャパン 編集本部メディア編集部長)

記事の勝ち上がり戦

scanrail/iStock/Thinkstock

ヤフー・ニュースは巨大な集客装置だ。ヤフー・ジャパンの奥村氏によると、月間で、ヤフー・ニュースのユニークユーザーは6千9百人、PVは約45億PVにのぼるという(要約者注:ここで紹介する情報や肩書はすべて、本書刊行当時のものである)。ヤフー・ニュースでは、自分たちで記事を書いているわけではない。150の配信元から送られてくる記事から、1日40~50の記事をピックアップして、編集部で読む。そして、読者の関心を予想して、1ページで話題の全体像をつかめるように、過去の記事も含めた関連記事のリンクを貼っていく。できあがった記事のパッケージに、13・5字の見出しをつける。そして、「海外」「経済」など8つのジャンルの記事をつくっていき、そのなかからトップ画面にふさわしいものを8本選びぬく。いわば記事の勝ち上がり戦だ。トップ画面には「世の中の動きがわかるニュースが6割、エンタメ的ニュースが4割」というバランス感覚でニュースを出しているそうだ。PVがとれる記事はもちろん大事だが、それだけを狙わない。面白い記事で人を惹きつけ、知っておくべき記事のページに呼びこむ、というのが、ヤフー・ニュースの在り方だという。

現代の俳句 13.5文字の見出し

ヤフー・ニュースで特徴的なのは、見出しを13.5文字におさめていることだ。人間がパッと見て瞬間的に意味をつかめる文字数は13文字なのだという。ニュースの見出しは編集部員みんなでブラッシングしていく。たとえば「会社でのメール セキュリティルールと社員の意識の実態」に関する記事につけた見出しは、「6割が会社のメールを私的利用」→「職場PCでショッピングを」→「禁止でも職場PCでショッピングを」というふうに磨かれていった。クリックしなくても内容がわかるようなタイトルをめざし、ユーザーを「釣る」目的の「?」マークはつけない。「編集の妙味は、切り捨てることにある」と奥村氏は語る。

ヤフー・ニュースはメディアか

奥村氏は、あるブログのなかで、ヤフー・ニュースがメディアかどうか討論されているのを読んだ。取材をするのがメディアだと考える人は「メディアではない」といい、たくさんの人に読まれているから「メディアだ」という人もいたそうだ。そこをはっきりどっちだということはできないが、ニュースを発信する際は、伝えるべきことを伝えるということを大事にしているという。PVを狙うニュースばかりになってしまっては、読み手が本当に知りたいことを知ることができなくなってしまう可能性が出てくる。

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要約公開日 2015.04.27
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