マッキンゼー ボーダレス時代の経営戦略

2015年新装版
未読
マッキンゼー ボーダレス時代の経営戦略
マッキンゼー ボーダレス時代の経営戦略
2015年新装版
未読
マッキンゼー ボーダレス時代の経営戦略
出版社
masterpeace
出版日
2015年03月06日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

経済活動から「国境」が消滅するボーダレス時代で生き残るために、経営トップに必要なものは何か? 大前氏はグローバル、ファイナンス、ICTの三つを挙げる。中でも「グローバル感覚」を身につけるには、自ら色々な国を訪れ、その国の実情を自分の目で見ることが重要だという。次世代のトップを目指す人にとって必要なのは、インドネシアやフィリピンなど、その国の人が実際にどのように考えるのかをつかむ「皮膚感覚」を磨き、現地の人や会社を紹介できるようなヒューマンネットワークを築くことである。それらにくわえて、リスクを取って既存のカルチャーを破壊し、新しいものを生み出す「イノベーション」の重要性を大前氏は強調する。

本書は1992年にプレジデント社から発刊された同書をデジタル加工し、最新の大前氏のインタビューを追加収録した新装版である。金融の無国籍化、21世紀企業への体質転換、環境、R&D(研究開発)マネジメント。こうした18のテーマについて、マッキンゼーの世界のスタッフが「現地の実情」をもとに書き上げたレポートの抄訳と、そのテーマについての大前氏の独自の見解が紹介されている。発刊から20年以上経っても、多くの日本企業にとって未だ重要なテーマにおける大前氏の提言は、各課題の核心に迫ったものばかりであり、先ほど述べた「皮膚感覚」を磨くヒントが詰まっている。「現在にも通用するビジネスの真理」が刻み込まれた本書を、エクセレント・カンパニーの仲間入りを目指す経営者や、起業を目指す人にぜひ読んでいただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

大前 研一
1943年、福岡県若松市(現北九州市若松区)生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京工業大学大学院原子核工学科で修士号、 マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。経営コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー日本社長、本社ディレクター、アジア太平洋地区会長等を歴任。94年退社。96~97年スタンフォード大学客員教授。 97年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院公共政策学部教授に就任。 現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長。オーストラリアのボンド大学の評議員(Trustee)兼教授。 また、起業家育成の第一人者として、05年4月にビジネス・ブレークスルー大学大学院を設立、学長に就任。2010年4月にはビジネス・ブレークスルー大学が開学、学長に就任。02年9月に中国遼寧省および天津市の経済顧問に、また10年には重慶の経済顧問に就任。04年3月、韓国・梨花大学国際大学院名誉教授に就任。『新・国富論』、『新・大前研一レポート』等の著作で一貫して日本の改革を訴え続ける。著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    ボーダレス化の時代で生き残るには、日本企業は日本人優先、年功序列、終身雇用といった人事制度や、価値観、企業体質を転換していく必要がある。
  • 要点
    2
    ボーダレス化の時代において、重要な施策は、トップも含めて、社内で世界の市場や現状に通じた人材を養成し、世界を飛び回って得た経験をもとに経営判断を行うことである。
  • 要点
    3
    中長期戦略の中核はR&Dである。下請けにならないようにCTOには権限を持たせ、若くて好奇心が旺盛で、イノベーションの現場の近くに身を置き、長期的な展望に立てる人物を据えるべきである。

要約

【必読ポイント!】 二一世紀に日本企業が生き残る条件

自己変革のプロセスにおいて必要なもの
Rawpixel Ltd/iStock/Thinkstock

企業の変革において一番必要なものはビジョンである。これまでの成長パターンの延長線上で考えていては、さらなる発展は望めない。会社の現状から離れて、将来はこんな会社になっていたいと考えると新しい発想が生まれてくる。そこから現在を振り返り、今、何をすべきかを考察するほうが、変革はより容易になるはずだ。生産拠点と資本の国際化が進む中で、日本企業が生き残るには、異質なことへチャレンジし、世界のエクセレント・カンパニーを目指す必要がある。

第一のネックになるのが日本人優先、年功序列、終身雇用といった人事制度である。また、事実上の閉鎖経済を取っている現在の日本における価値観は普遍性に乏しいという問題がある。そして究極的には、企業体質を転換しない限り、新たなビジョンに到達できない。すべての企業が第三次産業化し、ユーザー・オリエンテッドなサービスになっていく時代においては、コストダウンや大量生産に強みを発揮してきた日本的企業文化は、自己変革のプロセスの足かせとなってしまうのだ。

「多国籍企業」変革への六つの鍵
ChristianChan/iStock/Thinkstock

エクセレント・カンパニーといえども、適応能力の限界をこえる外部環境の変化の波に飲み込まれる場合がある。大きな変化に対処するには、抜本的に異なる経営スタイルへと移行しなくてはいけない。経営変革を成功させる鍵は次の六つである。

第一の鍵は、トップリーダーが変革の必要性を深く認識し、ことあるごとに変革のビジョンを社員に語りかける「変革の体現者」になることである。経営変革には短くとも一~二年、長ければ五年以上の歳月を要する。変革が頓挫する危機に瀕したときこそ、トップが変革へのコミットメントを貫き通すことが不可欠だ。

第二の鍵は、主要管理職をメンバーとする変革推進チームの編成にある。変革を速やかに達成するには、変革のボトルネックを早期に識別・除去しうる立場にある人々を、変革当初から巻き込んでおく必要があるのだ。トップリーダーは、変革推進の要となる部署の優秀な人材を選抜してチームを編成すべきである。適宜、権限を委譲し、変革プロセスを忍耐強く見守る目を持たねばならない。

第三の鍵は、変革推進チームが変革のビジョンにコミットし、「変革リーダー」となることである。変革ビジョンを具現化するシナリオ作りや、問題点の抽出、分析、解決策の模索と、メンバー間での合意形成といった不断の努力を経て、自社の状況を広い視野から眺められるようになり、結果として変革リーダーとして幅広い信任が得られるようになるのだ。

第四の鍵は、変革リーダーを変革遂行上の要職に配置することである。変革のシナリオを実行するには、変革リーダーには、社内政治の枠を超えた権限が必要になる。

第五の鍵は、変革リーダーが変革遂行のための管理スタイルを体得することにある。具体的には、変革ビジョンの浸透と問題の吸い上げのために活発でフランクなコミュニケーションをとること、リスクや失敗の許容、変革達成への忍耐などである。

第六の鍵は、組織全員の行動様式を変革し、新ビジョンや新戦略実施に不可欠な企業スキルを構築することである。今日の競合優位性とは、戦略実行に要する企業スキルを他社よりも早く、より高いレベルで獲得することであるといえる。だからこそ、戦略とリンクした具体的に必要なスキルを明確化することが非常に重要なのである。

「ボーダレス・マネジメント」革命

ボーダレス化に対処するには
Rawpixel Ltd/iStock/Thinkstock

来るべき「ボーダレス化」に、日本企業はどう対処すべきだろうか。

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要約公開日 2015.06.04
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