経営理念とは「経営をするうえで基本的価値観の表明、根本の考え方」のことを指す。言い換えれば、「経営の原理原則」「経営哲学」「経営観」のことである。
それゆえ、経営の目的を考えることが重要だ。もしあなたが経営者なら、一度立ち止まって自分に対して「何のために経営をしているのか」を問い直してみると良い。
京セラやKDDIを創業し、JALを再建した稲盛和夫氏は企業の目的を、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」と定めている。すなわち、会社とは利益を出すためにあるのではなく、①社員を幸せにし、②社会に貢献するための手段なのである。
もしあなたがいま、自分だけ良ければいいという「利己」の経営をしているのであれば、人のために良かれという「利他」の経営に変えるべきだ。経営者の心が「利己」から「利他」に変わると、考え方も変わる。社長の話に説得力が出て、社員も決意を感じ、ついてくるようになる。これが、経営理念が会社の業績に大きな影響を与える理由の1つとなる。経営理念とは、人の心を動かす大きな力を持っているのである。
本書ではさらに経営理念を「信念にまで高まった社長の哲学」と定義している。すなわち、ちょっと思っている程度、たまに口に出すようなものではなく、「これが私の信念!」と言い切れる不動の哲学と言えるものだ。
また、経営理念は内容も重要だ。社長が持つ経営観だけでなく、人生観や社会観などの価値観すべてに対して「私はこう思う!」という強い想い、信念の集積が経営哲学である。
経営理念と業績は正比例の関係にある。売上が2.5億円未満の企業のうち理念がある会社は47%に留まる一方、30億円以上の企業では76%が理念を持っている。しかし、経営理念がある全ての会社の業績が良いわけではない。それでは、経営理念は何のためにあるのだろうか。
経営理念を作る理由は、「社員のモチベーションを上げるため」ではない。なぜなら、経営理念をつくった結果、社員のモチベーションが上がるかもしれないが、社員のモチベーションを上げるための手段と捉えてしまうと、経営理念づくりが表面的な浅いものになってしまう。
また、経営をするための道具というのも間違っている。経営理念とは何のために経営をするのかといった本質的な考え方をまとめたものであり、経営を始めるにあたっての根幹だからだ。
もし仮に経営理念がなければ、使命感の喪失、方向性の喪失、判断基準の曖昧性といった問題が起きてしまう。社員にも迷いや不信感、モチベーションの低下が見られ、社外からも信用が得られない事態に陥るだろう。経営理念には会社の使命感、方向性、判断基準が示されており、それが日常の仕事に反映されるのだ。
経営理念を考えるにあたって、まずはいまの自分自身を知ることが重要だ。経営理念はどこか遠いところにあるものではなく、自分自身の体験や日常の中にあることをベースにつくり上げるものだからである。
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