取締役会の仕事

先頭に立つとき、協力するとき、沈黙すべきとき
未読
取締役会の仕事
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先頭に立つとき、協力するとき、沈黙すべきとき
未読
取締役会の仕事
出版社
出版日
2014年12月16日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

うまく運営して会社に利益をもたらす取締役会と、それにはほど遠い取締役会。これらを二分するのは、取締役会のリーダーシップである。

本書は、アップルやフォードといった名だたる大手企業の経営幹部や取締役へのインタビューをもとに、取締役が経営幹部とともに積極的にリーダーシップを発揮した成功事例や、機能不全に陥ってしまった失敗事例を紹介しながら、新しい形のコーポレート・ガバナンスを提案する。著者らによれば、従来の経営の監視機能だけでなく、取締役のリーダーシップ機能がますます重要になっていく。今後求められる取締役会とは、CEO とともに戦略を立ててリスクを把握し、ボードリーダー(筆頭取締役)の指揮のもと、各取締役が手腕を活かせている状態である。

本書では、取締役がリードするとき、協力するとき、距離をおくときを見極められるような実践的な判断基準や手法を示している。複雑化と不確実化が進む時代に対応して、取締役会の役割や、取締役に必要な資質、そしてCEOの承継・解雇といった具体的な課題への対処のステップを具体的かつ体系的に述べているという点で、類書にはない斬新さがある。取締役会のメンバーはもちろんのこと、今後の目標にしている読者にとっては、格好の実務の手引きとなり、取締役会との接点をもつ管理職にとっては、革新的なリーダーシップをふるう取締役との仕事のイメージをふくらませる材料となるはずだ。

ライター画像
松尾美里

著者

ラム・チャラン
世界的に有名な経営コンサルタント。顧客にはGE、フォード・モーターズ、デュポン、コカ・コーラ、3Mなど著名企業が名を連ねる。ハーバード・ビジネススクールで修士号、博士号を取得し、ハーバード大学、ノースウェスタン大学で教鞭をとる。『経営は「実行」』(日本経済新聞出版社)など著書多数。

デニス・ケアリー
トップエグゼクティブのヘッドハンティングを手がけるコーン・フェリー・インターナショナルの副会長。元デラウェア州政府労働長官。著書に『CEO Succession』(Oxford University Press)など。

マイケル・ユシーム
ペンシルバニア大学ウォートン・スクール教授。MBAコースで教鞭をとるかたわら、多数の企業・団体でリーダーシップやガバナンスの教育を実践している。著書に『インド・ウェイ 飛躍の経営』(共著、英知出版)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    取締役会のリーダーシップの重要性が増している。ボードリーダーにとって重要な任務の一つは、「取締役会が先頭に立つとき」、「協力するとき」、「関与しないとき」を見極めることである。
  • 要点
    2
    取締役が真っ先に取り組むべき課題は、基本理念を明確かつ説得力のあるものにし、メンバー全員がそれを確実に理解できるようにすることである。
  • 要点
    3
    取締役会にとって、CEOの後継者の選任は重大な任務の一つであり、CEOに不可欠なリーダーシップの要件を考え、その後、候補者が過去に発揮してきたリーダーシップを検討するのが望ましい。

要約

重要性を増す取締役会のリーダーシップ

新しい義務、リーダーシップ義務の登場
IPGGutenbergUKLtd/iStock/Thinkstock

取締役会のリーダーシップの重要性が増している。1980年代 、「企業は誰のものか」という議論が盛んになり、株主が積極的に自らの権利を主張し始めた。取締役会は大株主である機関投資家の代理として経営陣を監視するようになった。こうした動きの中で、取締役が果たすべき義務として確立されたのが、「注意義務」と「忠実義務」である。前者は、取締役の合理的な注意をもっての責任遂行を、後者は取締役の「株主の代理」としての適切な受託者判断の必要性を説くものであった。同時に、会社が下す決断が複雑化するにつれ、リーダーシップ義務というさらなる責任も不可欠なものになっていった。

取締役と経営陣は取締役会を「双方がかかわって会社の重要な決定を下す場所」とみなすようになった。例えば、企業戦略、資本配分、経営幹部の承継や報酬、人材開発、企業リスクについてである。

ボードリーダーにとって重要な任務の一つは、「取締役会が先頭に立つとき」、「協力するとき」、「関与しないとき」を見極めることである。例えば企業戦略の立案などにも深くかかわるが、業務遂行は経営陣に任せなくてはいけない。

【必読ポイント!】 機能する取締役会とは

求心力を発揮した「基本理念」
Amit Somvanshi/Thinkstock

取締役が真っ先に取り組むべき課題は、基本理念を明確かつ説得力のあるものにし、メンバー全員がそれを確実に理解できるようにすることだ。基本理念は、戦略を遂行するための拠り所になるからである。事業戦略を評価する際にも基本理念を参照し、それが運営にどのように反映されているかを確認する必要がある。

確固たる基本理念によって急成長しているインドの通信会社、バーティ・エアテルを例にとろう。

同社は、「他社より早く成長する。圧倒的なナンバーワンを目指して拡大する」という理念を、より具体的かつ測定可能な実行プランに落とし込んだ。エアテルが電話ネットワークと顧客関連のインフラを外注したときは、世間はコア・コンピテンシーを外に投げ出すようなものだと受け止めた。しかし、エアテルは「規模とスピード」という理念に従い、一見すると非常識とも言うべき決断を下したのだ。結果的に2012年時点で、エアテルは顧客数、ブランド認知度、売り上げシェア、市場価値において、インドでナンバーワンの携帯電話会社の座に躍り出た。

基本理念と戦略と実行の組み合わせがあるからこそ、取締役と経営陣はぶれることなく合理的に行動することができたのである。

取締役の適任者とは

取締役会に リーダーシップ機能を持たせるには、基本理念に合致したリーダーシップを発揮できる新しいタイプの取締役が必要だ。選定条件の一部を紹介しよう。

・会社全体、顧客価値、競争力について戦略的に考え、基本理念の展開に継続的に貢献できるか

・運営上の細かなプロセスに介入することなく、取締役会の議論に貢献できるか

・他社で、経営陣と連携しながら、基本理念にもとづいた新しいビジネス手法を開発し、導入した実績があるか

こうした条件を満たす取締役を選んだ事例として、中国を代表するコンピュータメーカーのレノボを例に取り上げよう。

レノボの経営陣は、会社の長期的な成長のためには、中国市場を死守するだけでなく、グローバル・プレイヤーとして戦う必要があると判断した。IBMからパーソナルコンピュータ部門を買収するという決断を下したとき、当時の執行会長リューは、買収後に海外から取締役を迎え、経営陣に助言を与えるという役割を取締役会に追加した。独立性とグローバルな情報機能を備えた、積極的なガバナンス体制をつくりあげるためだ。

その後も取締役会は、CEOを替える必要性を察知し、速やかに実行した。また、レノボとIBMという異なる企業文化の統合を促進し、同社はPCのグローバル市場においてナンバーツーの地位を獲得した。

リーダーシップを発揮するには、取締役同士および取締役と経営陣の間の信頼関係が欠かせない。基本理念を理解し、経営陣と連携しながら取り組み、積極的にリーダーシップを発揮できる取締役を据えることが重要なのである。

機能不全を取り除く

トラブル を起こす取締役がいる場合、どのように対処すればいいのか。

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要約公開日 2015.05.14
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