この1冊ですべてわかる CRMの基本

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出版社
日本実業出版社

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出版日
2014年11月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

ICT(情報通信技術)進展の影響を受け、顧客ニーズの多様化が一段と進むと同時に、顧客理解を深めるために企業が使えるデータの量も格段に増えてきている。そして、そのデータを有効に活用しながら、顧客一人ひとりと向き合い、長期的によい関係性を構築できないと、競合他社に打ち勝つことができない時代が到来している。

本書には「ソーシャルリスニング」「オムニチャネル」「O2O(Online to Offline)」「ビッグデータ」といった注目のマーケティング用語がほぼ網羅的に登場する。それはつまり、最新のCRMの動向について書くことが、最新のマーケティングについて書くこととほぼ同義になるほど、マーケティングにおけるCRM戦略の重要性が高まっているということなのではないだろうか。

本書のタイトルの冒頭に「この1冊ですべてわかる」とあるが、まさにその通りである。マーケティング関連の部署に異動を命じられ動揺している方がいるとしたら、本書を読むだけで、異動後の打合せで飛び交うキーワードについての知識を得られるだろうし、業務について具体的なイメージを描くことができるだろう。既にCRM戦略のエキスパートである方は、最新の動向について整理できるだろうし、豊富な事例から業務へのヒントを得られるだろう。広くマーケティングに携わる方は、データを活用して顧客志向を実践することの重要性とポイントを理解することができるだろう。

そういった意味で、CRM戦略に携わる方だけでなく、マーケティングに興味を持つすべてのビジネスパーソンに、是非本書をお勧めする。

著者

坂本雅志
株式会社スマートウィル代表取締役社長。
青山学院大学経済学部卒、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科修了(MBA)。1993年、日本生命保険に入社し、12年にわたり、リテールマーケティング戦略構築を担当。2005年、日興プリンシパル・インベストメンツ(現シティグループ・キャピタルパートナーズ)に参画し、マーケティング戦略担当として、リテールビジネスを中心とした多くの投資先の経営支援を行なう。08年より、ベルシステム24の社長室長・執行役員営業企画室長・専務執行役・COO(最高執行責任者)を歴任。この間、BBコール取締役、ワン・トゥ・ワン・ダイレクト代表取締役社長、日本テレマーケティング協会常任理事を務める。
10年に独立し、CRM戦略を核とした経営コンサルティング会社のスマートウィルを設立。アパレル、美容、メディア業界の企業を中心にCRM戦略をサポートしている。
12年より、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール)の非常勤講師として「CRM戦略」講座を担当。

本書の要点

  • 要点
    1
    CRM戦略の実践には、1人のユーザーに関するデータがサービスをまたがって共有される、1顧客1ID化が必須である。
  • 要点
    2
    CRM戦略とは、「顧客の識別」と「識別した顧客との顧客リレーションの構築」についての企業の戦略であり、その目的はLTV(顧客生涯価値)の最大化である。
  • 要点
    3
    ソーシャルメディアを通じ生活者・消費者が情報発信の主導権を握ったことは、顧客志向の重要性を高めると同時に、企業における優良顧客の概念を変化させている。

要約

なぜ今CRM戦略なのか?

「1顧客1ID化」
IvelinRadkov/iStock/Thinkstock

Googleは2012年3月にそれまでのGoogleの各サービスが持っていたデータを一本化し、ユーザーを1つのIDに集約できるようにした。そのせいで、現在ではそれまでと違って、個人が「YouTube」で視聴した動画まで、検索結果に影響するようになっている。Amazonは、1つのIDに顧客の購買履歴や閲覧履歴を蓄積し、「レコメンドエンジン」により購入者の趣味・嗜好に合わせた商品紹介を行っている。

「1人のユーザーに関するデータが各サービス間をまたがって共有され、ユーザーの利便性向上につなげる」という1顧客1IDの考え方は、CRM戦略を描くために避けては通れない課題である。

CRM(顧客関係管理)は、顧客マネジメントや顧客関係性マーケティングと捉える考え方もあるが、本書では企業が顧客に焦点を当てて行なう経営戦略として捉えている。

CRM戦略の始まりと進化

店舗で会員証を発行し、購入金額に応じ特典を付与する施策など、古くから顧客の識別や顧客との関係性構築は行われてきたが、CRM戦略の取り組みが始まったのは、1990年代半ば頃、営業担当者の活動をITシステムで支援するSFA(Sales Force Automation)導入からだった。その後、顧客会員化のムーブメントやインターネットによる電子取引の普及により、クレジットカードやポイントカードなどが、顧客の属性や購買履歴を管理する仕組みとして機能するようになった。また、コールセンターなどの顧客接点の多様化、顧客接点から得られるデータの管理も重要な意味を持つようになった。現在では、データを一元的に管理・分析して活用する取り組みは、企業活動に不可欠な要素となっており、技術的にも顧客情報の蓄積・分析・提案が自動化されるまで進化している。

ソーシャルメディアが顧客志向の重要性を高める
Catalin205/iStock/Thinkstock

これまで、情報発信の主体は「企業」であり、新聞・雑誌・テレビ・ラジオのマス4媒体やインターネットなどを介して、生活者・消費者に一方的に情報を発信してきた。だが、生活者・消費者がFacebookやTwitter、LINEなどのソーシャルメディアを通じ価値ある情報交換を行うことで、情報発信の主導権は「生活者・消費者」に移行し、企業の一方的な情報発信は簡単には受容されなくなった。こうした状況はマーケティングのあり方そのものを大きく変えるパラダイムシフトだといえる。顧客の声に耳を傾ける「価値共創マーケティング」はその産物といってよいであろう。

一方で企業は、ソーシャルメディアにおける顧客の能動的な消費活動により、顧客の趣味・嗜好や交友関係といったプロファイル情報、WEBマーケティング施策への反応状況、POSや電子マネーによる購買履歴などを取得できるようになった。つまり、ライフスタイルの変化に伴って多様化する顧客のニーズを捉えることや、潜在的な見込顧客を高い精度で捉えることが可能になったのだ。

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要約公開日 2015.02.27
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