創造性は、謎めいたプロセスゆえに、古来は神の恵みによるものと考えられてきた。
しかし創造性は、適切なエコシステムを設計し、そこに適切な訓練を受けた幅広い視野をもつ人々を集めることで向上させられる。つまり適切な条件下では、誰でも優れたアイデアを生み出せるのだ。ハーバード・ビジネススクール教授の、テレサ・アマバイルによると、創造性は次の4つの要素の影響を受ける。
(1)分野に関するスキル
特定分野の知識や技術的スキル、才能を意味する。企業では、研修やジョブローテーションなどによって向上させることができる。
(2)創造性に関連するプロセス
ある問題に対処し、解決策を生むための方法である。共感性が高く、リスクを恐れない自立した人はこのプロセスが得意であるが、それ以外の人も学習によってこのスキルを身につけることは可能だ。
(3)タスク・モチベーション
ある課題を解決したいという欲求や達成感、情熱のこと。仕事やプログラムの設計次第で、個人のやる気を引き出すことができる。
(4)社会的環境
4つの中で唯一外的要因となる。取り巻く環境がそこで活動する人々の創造性を大きく左右するため、最重要な要素だと言える。
つまり、ある程度の専門知識を持った人が、創造性を奨励される環境で心からやる気になったとき、最高の創造性を発揮でき、イノベーションを起こすことができるというわけだ。クリエイティブであることには、さまざまな迷信が信じられているが、それでは間違った答えにたどりついてしまう。次項以降では、そうした迷信を明らかにし、クリエイティブになるための考え方を紹介する。
私たちは創造的なアイデアを突然ひらめいたかのように語りがちで、ひらめきを得る前後の努力については注目しない。ところが、アイデアを思いつくのは単なる幸運ではない。
ニュートンが、頭の上にリンゴが落ちてきたことで万有引力の法則を発見したというエピソードは有名である。しかし、歴史的証拠によると、ニュートンは引力が天体の動きに与える影響について、この時点で既に研究していた。そして、リンゴが落ちてきたとたんにその疑問が解けたわけではなく、引力の法則を数式化して発表するまで、その後何年もかかっている。
天才的なアイデアは、突然のひらめきのように語られることが多いが、発案者たちはその前後にたいへんな努力を重ねているのだ。
心理学者のチクセントミハイが、クリエイターの思考プロセスを研究した結果、彼らのほとんどが、準備、培養、ひらめき、評価、精錬の5つの段階からなる創造的プロセスを踏んでいることが判明した。ここでの「培養」とは、目下のプロジェクトからしばらく離れる段階を指し、準備段階で培った知識が消化され、アイデアが無意識にまとまっていくことをいう。数日から数年の培養期間を経てやっと、ひらめきの段階に達するのだ。
また、あるタスクを継続的に行うよりも、途中で中断して関連のないタスクを行った方が、そもそものタスクのアイデアを多く生み出せることが判明した。
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