リクルートは、起業志向の強い人材が集まり、若いうちから経営の勉強ができる会社と評されている。リクルートの人事採用は、人事部に一番優秀な人材を配属させるほど、多大なパワーをかけている。採用で重視するポイントは、「自分より優秀な人物かどうか」、「自分が一緒に働きたいと思うかどうか」の2つであるという。
とはいえ、優秀な人材が勝手に育つわけではない。経営者に必要な能力を身につけられるように、ユニークな仕組みが用意されている。
代表的な制度は、社内に小規模な経営単位をつくり、その長が経営者のように運営するという「PC(プロフィットセンター)制度」である。PC長は、営業の売上げ数字だけでなく、人件費やフロアのスペース代に至るまで管理を任され、PC同士の熾烈な競争に勝ち抜かねばならない。
また、社内有志が部署を超えて新規事業などの提案を行う「RING(リクルート・イノベーション・グループ)」という制度も経営の視点を養うのに一役買っている。(現在はIT関連の新ビジネスモデル開発を目的とした制度になっている。)マーケティングや原価計算、売上げ予測、事業計画への落とし込みなど、経営に付随する作業を積み重ねていくため、「社員皆経営者主義」の風土が醸成される。自分たちの提案を経営陣の前でプレゼンし、その遂行を任せられる可能性に、多くの社員が大きな魅力を感じて参加し、この制度を通じて「ゼクシィ」「Hot Pepper」などのサービスが続々と生み出された。
また、自己評価と周囲の評価のギャップを明らかにし、フィードバック・ミーティングを行う「ROD(ロッド)」という社内研修が、新入社員から取締役にまで徹底されて行われていたのも特徴的である。
このように、経営者となるための訓練を十分積むことができ、それが奨励される仕組みを用意しているのがリクルートなのだ。
リクルートは社内外の人とのコミュニケーションを大事にしている。創業者の江副氏は社外の人との会食の機会を意識的に持つように呼びかけていたし、社外の勉強会・講演会への参加も奨励していた。普段から、営業はクライアント先におせっかいなまでに入れ込み、濃い関係をつくっている。こうして作られた「社外とのパイプ」がリクルート卒業後のキャリアを支えると同時に、巣立ったOB・OGがリクルートの次世代の経営者・リーダーを支え続けている。
また、「仕事を好きになるには仕事を知ることが前提」という考えから、会社全体の状況についての情報は常に開示されている。取締役会の内容の伝達だけでなく、自由闊達な社内コミュニケーションが促進されていた。「かもめ」や「週刊リクルート」といった社内報は、社員の成果を讃えて鼓舞するという役割を担っていた。
採用・教育研修・モチベーション戦略のコンサルティングを展開する株式会社プラネットファイブ代表取締役の田中和彦氏。
リクルートでのスタートは人事部だった。起業精神や独立志向が強い学生を口説くために全国をめぐった。また、人事部には全社員の3割以上を異動させるといった、数値目標が課されていた。「人を入れ替えないと組織は活性化しない」という江副氏の強い意志があったためだ。仕事に慣れた頃に異動させられると、努力して前進するしかないため、「新しい挑戦」への度胸がついていくのだという。
しかし、田中氏自身はコピーライター志望だったのに人事課長になるという自分のキャリアにモヤモヤを抱えていた。
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