1960年代半ば以降、神経科学領域の研究が急速に進み、脳の動きを観察できる技術の確立により脳科学がビジネスへ応用されるようになる。これを「ニューロマーケティング」と名付け、実際にショッピングしている最中の消費者の脳波を分析し効率的に戦略を立てることが可能になった。例えば、店内のレイアウトや商品ディスプレイに対する消費者の無意識の反応を調べ、売上増加につながる具体的戦略を策定するなどである。また、店内の看板の色や照明といった間接的な工夫も商品の売上に大きく影響する。ショッピング現場にはこのような「かくれた説得者」が消費者の購買行動を後押しする仕組みが随所に組込まれているのだ。
「欲しい」という要望が高まると「欲しいし必要(ウォンツニーズ)」という願望に変化し強い購買欲求につながる。ここで重要なのは「ウォンツニーズは作られる」ことであり、広告や販売業者以外にもテレビなど多くの媒体がその役割を果たす。「ウォンツニーズ」を作り出す具体的方法は、買い物客に料理の仕上げ工程などの「作業」をあえてしてもらう、希少性を作り出す、楽しさを演出する、などである。消費者の無意識の反応を分析すればこの「ウォンツニーズ」が最高レベルになる商品を特定できるのだ。
セールスの本質とは「問題解決」であり、その構成要素は「課題」、「方法」、「目標」の3項目に分類される。その「問題」とはウォンツニーズから生じる問題であり、脳内イメージから消費者の潜在意識に入り込み、どの点に注目しどの要素を強調すべきかを分析する。
マーケティングの代表的手法は「価格設定」である。消費者の価格判断はいい加減なもので、商品の容量の変化は気にせず価格だけで決定するケースが多い。商品の容量を減らし価格を維持することは、消費者の負担を増やさず企業の利潤を拡大できる方法として近年よく見られるものだ。また、価格に関しても、実は消費者は先頭数字だけを注目している、ということが分かっている。
消費者の潜在意識にある購買行動の障害の一つに「拒否反応」というものがある。人が嫌悪感を示すものはできるだけ排除することが大切だ。例えば、ゴミ袋や猫用トイレと食料品は同じ棚に陳列しない(「伝染効果」の除去)、などだ。潜在的恐怖心の影響は実際の接触がなくても生じ、選択や評価に大きな影響を及ぼすとされる。
脳画像技術と脳機能の研究により開発されたニューロマーケティングは、消費者行動に関する多くの謎を解明してきた。従来の調査方法であるアンケートは被験者の脚色が含まれ、思い込みなどでも結果は左右されるため、データの信頼度が不透明だった。
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