まだ世界にモノがなかった時代、マーケティングはあまり必要とされていなかった。必要な製品であれば、そして競合もまだ出てきていない状態であれば、生産した分だけ売れるという状態が続く。こうした状況下では「どれだけ生産できるのか」「どこで商品が手に入るか」という情報を単純に知らせることが重要になってくる。この水準をマーケティング1・0と呼ぶ。
しかし、商品がふんだんにある現在では、つくっただけではモノがすぐに売れるというわけにはいかない。類似の製品があったり、代替品が出てきたり、競合が価格を下げてきたり、顧客のニーズが多様化したりと、さまざまなハードルが出てくるからだ。
そのため、多くの場合は商品が市場に出る前に調査を行い、そしてS(セグメンテーション)、T(ターゲティング)、P(ポジショニング)や4P(マーケティング・ミックス)といった売るための施策が熟考される。さらに市場に出てからも商品が過不足なく供給されるように管理されるのだ。これらがマーケティング2・0もしくはターゲット・マーケティングと言われるものである。すなわち、競合なき世界で行われていた体力勝負のマーケティングから、頭脳勝負のマーケティングへと進化したのである。
事実、1908年に登場したT型フォードは1500万台以上も売れたが、市場が飽和してしまったことに加え、競合製品と比較されるようになったことが引き金となり、他社より自動車を売ることを考えていくなかで、より複雑で高度なマーケティングに移行するようになった。
マーケティング2・0は性別、地域、年齢層など個人の属性に着目し、さまざまなアプローチ方法を用いて最適な購買層を探っていく方法論であった。そして現在のマーケティングは、個人の帰属する組織や団体などの「嗜好や価値観を共有している集団」との関係性に注目が集まっている。こうした複雑な状況下のマーケティングの議論が2000年頃から増え続けている。
マーケティング2・0の基本的概念は先に述べたSTPである。
S(セグメンテーション)とは「市場を区分けすること」で、地理的条件、年齢性別、好み、行動様式といった要因から、共通のニーズを持つ人たちの集団を区分けし、より「絞り込んだ市場」として捉え直すことである。
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