京都は全国第1位の老舗出現率(100年以上続く会社が占める割合、3・65%)を誇っている。それは、京都に首都が置かれていた1200年間、一流の職人や商人、芸人が京都に集められ、互いが切磋琢磨してきた歴史と大きく関係がある。また、住民の美意識や食への意識が高く、その中で生き残るには絶対的な品質と信頼を培う必要があった。
一方で、京セラや村田機械、日本電産など新しい企業が育ちやすい風土も根づいている。「新しいものを受け入れ、自らに合うように変容させる」という日本人の技術が、京都に凝縮されている。だからこそ、京都の企業は時代に合わせて進化してきたといえるのではないだろうか。
京都には独自の「おもてなし」の心が育まれている。例えば、「一見さんお断り」は、お高くとまっているように感じられるかもしれないが、実はそうではない。常連のお客様を大事にするため、お客さんの情報不足からおもてなしが不足するのを予め防ぐため、そして、信用できる紹介者の存在によって代金の回収を確実なものにするためという理由がある。
京都の人は、歴史的に身分が上の人と接する機会が多かったため、相手への気づかいを中心としたコミュニケーションを大事にし、暗黙のルールを守ることに厳しいという特性を持っている。
ほとんどが斜陽産業と呼べる京都の老舗企業が、この100年間の劇的な変化に対応し継続できた理由は何だろうか? それは、「残すべきもの」と「変えるべきもの」を明確に分けているからだ。
「残すべきもの」として挙げられるのは、「屋号(社名)」、「家訓や社訓などの教え」、そして「のれん(営業権)」である。社名はブランドの認知において、一番の看板になり、他社からの信頼を得るために不可欠なものだ。「家訓や社訓」は創業者の思いや過去の経験を汲んだ、会社の社風を形作る支柱である。「のれん」はコーポレートアイデンティティーであり、企業を一目で認識させる「ロゴ」の要素もある。企業の根幹を支えるこれら3つが変わってしまうと、企業の連続性が損なわれてしまうため、京都の老舗企業はこの「心」の部分を明確にして残している。
では、「変えるべきもの」は何なのか?
3,400冊以上の要約が楽しめる