シンプルな戦略

戦い方のレベルを上げる実践アプローチ
未読
シンプルな戦略
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戦い方のレベルを上げる実践アプローチ
未読
シンプルな戦略
出版社
東洋経済新報社
出版日
2014年03月27日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

改めて指摘するまでもなく、戦略については既に読み切れないほど多くの本が書かれてきている。そして、企業には多くの優れたスタッフがおり、日々戦略策定に励んでいる。それにもかかわらず結果は期待通りにいかないケースが多い。それはなぜなのか。

マッキンゼーで20年以上コンサルティング活動を行ってきた著者は、戦略そのものと戦略構築に関する理解不足が主要因になっていると考える。そこで、戦略の基礎を再確認するとともに、戦略構築の基本もおさえ、優れた戦略に至る道筋を具体的に示すべく書かれたのが本書である。

優れた戦略は本来シンプルなものだと著者は言う。戦略は、考え抜いた上で大胆な決断を下すことでシンプルになるまで磨き上げるべきものなのである。しかしそれは簡単なことではない。

本書では、まずシンプルな戦略がどういうものでなぜ必要なのかが提示され、それを構築するためにはどうすればよいのかが具体的に解説されている。実際の企業の例もちりばめられており、実践的な一冊と言える。戦略についてわかったつもりになっていた人にとっても、一読する価値は十分にある。

ただ、本文でも指摘されている通り、中途半端な理解や自己流のアレンジはその道具や枠組みの効用を減少させる。本書の枠組みを活用したいと考えるのであれば、十分に読み込む必要があるだろう。そして、本書はその読み込みに耐えうる内容を持っている好著でもある。

著者

山梨広一
1954年東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、スタンフォード大学経営大学院修了(MBA)。富士写真フイルムを経て、90年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。95年からパートナー。小売業、消費財メーカーおよびその他業界の企業の戦略構築や組織変革など、日本支社において最も豊富なコンサルティング経験を有する。2010年からは、東京大学工学部大学院TMI(Department of Technology Management for Innovation, 技術経営戦略学専攻)で「企業戦略論」の講義も行っている。著書に『プロヴォカティブ・シンキング 面白がる思考』(東洋経済新報社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    多くの日本企業にとって、市場が飽和するか縮小している現在、現状維持するだけでは事業は先細る。しかし、現在の財産を活かす、考え抜かれた「シンプルな戦略」を持つことで、成長軌道を見出すことができるはずだ。
  • 要点
    2
    理想的な「シンプルな戦略」とは、一言で言えて、しかも、①顧客の利益になる、②他社との違いがある、③儲かる、という三大基本要件を満たしているものが望ましい。
  • 要点
    3
    戦略は、①戦略目的の設定、②境界条件の再定義、③環境分析と洞察、④課題の抽出、⑤戦略的方向性の創出、⑥まとめ上げ、の6つのステップで構成される。

要約

【必読ポイント!】 今、なぜシンプルな戦略が必要なのか

その戦略は一言で言えるか

どんな困難な目標があろうとも、それを達成するための戦略はシンプルになるまで作り込み、削り込み、磨き上げるべきものである。これが25年にわたりマッキンゼーで数々の企業参謀を務めてきた著者のたどりついた結論だ。

本書の第1章では、「シンプルな戦略」とはどのようなものか、エッセンスを提示し、それが求められる理由を述べている。

「シンプルな戦略」は誰にでもわかる簡潔な戦略である。したがって、「その戦略は一言で言えるか」という要素が最も重要である。同時に、なぜその戦略が良いのかという、背景にある理由づけも明快であらねばならない。何をなぜやるのかが明確な戦略は、誰にでも伝わりやすく覚えやすい。このことは組織内の伝言ゲームで意味が歪められるのを防ぎ、組織全体の意思統一に役立つ。

また、その戦略が「戦略の3大基本要件を満たしているか」も重要である。「3大基本要件」とは、①顧客の利益になるか、②他社との違いがあるか、③儲かるか、である。顧客に価値を、それも独自の価値を提供し、その上で収益を生み出すものこそが戦略なのだ。そのためには、この3つの問いに対する答えを見つけた際に、その根拠をそれぞれ3つ以上あげられるようにして、3×3で9つのリストができるのが理想だ。

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実際にシンプルな戦略を採っている企業はある。その例がファーストリテイリング(ユニクロ)である。ユニクロの戦略は、「独自の付加価値を持った目玉となる戦略商品をとにかく徹底的に最大限売る」ことだと言えるだろう。例えば、フリースやヒートテックなどの商品は、機能性が高くかつ低価格であり、顧客にとって価値が高い。さらに、圧倒的販売量を背景に、高品質・高機能・大量安定調達・ローコストを達成しており、他社には到底真似ができない。そして、大量の販売は自社の利益にも大きく貢献している。戦略の3大基本要件を満たし、なおかつ、戦略としても明快である。

適切でない戦略、戦略不在が悲喜劇をもたらす
JaysonPhotography/iStock/Thinkstock

日本企業の戦略では、3大基本要件が揃っていないものが多い。例えば企業の、デジタル化を受けての対策を見るとそれが顕著である。ただネット上でも情報提供をするだけといった場合がしばしばあり、デジタル化によって顧客のニーズにどのような変化が生まれ、それにはいかに対応すべきなのかという要素がないのだ。

さらに、実現性と持続性が欠けている場合も多い。百貨店のバーゲンセールの前倒しなどがその例である。これは結局正規価格で販売できる期間を短くするだけであり、結果的には収益を圧迫するという事態を招いている。

また、シェア拡大といった目標のみを掲げるパターンや、すべての事業分野で大きな成長を目指すといったパターンも多い。これらはそもそも戦略とは言えない。

こうした状況にあると、その企業本来の力を発揮することは難しい。適切な戦略を持たないことにより、優れた理念や技術や人材をもつ一流企業でさえ、赤字を抱えてしまうことがある。

シンプルな戦略だけが現状を打破できる

厳しい経営環境の中では、シンプルな戦略こそが現状打破のために必要になってくる。市場が縮小しつつある中では、現状維持は事業の先細りを意味するため、現状を超える何かしらの「ニュー」が求められる。改良、改善とは違うレベルの「ニュー」な何かを用いて新たなパラダイムへ転換しなければならないのだ。シンプルな戦略はそのための突破口となり得る。シンプルな戦略は焦点が明確であり、多くの人で共有しやすいため、力を一か所に集めることができるからである。

シンプルな戦略は、ぶれない経営にもつながる。破るべき壁の1点に力を入れ続け、その上で細部への目配りと対応をすることが成功の鍵である。

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要約公開日 2014.09.02
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