ここ30年、企業経営の「ヒト・カネ・モノ」の重要性が変化し、現在は「ヒト」に遥かに重きがおかれるようになっている。特に過去と比較して「カネ」は世界に溢れており、一度成功した経営者が新しいことをする場合には、お金はいくらでも集めることが可能だ。ジャック・ドーシーやイーロン・マスクが次に何かするなら、投資家達が殺到するのである。
また、「ヒト・カネ・モノ」の他に、「2S」、すなわち「スピード」と「スケール」が重要となっている。「スピード」とはつまり、競争相手よりも先んじて行うことにより差別化しようという考えだ。
また、「スケール」に関しても、グローバルにおいて圧倒的な「スケール」の違いが差別化ポイントになり得る。台湾の鴻海精密工業の従業員数は120万人にも及ぶ。同様に台湾のTSMCという半導体のファウンドリも、二番手企業に比べると十倍以上大きい「スケール」で製造する力を有している。
時代が変わり、経営の要素自体は変わらなくても、要素間の相対的な重要性が大きく変わっているという点に着目するべきなのだ。
現実のビジネスの世界においては、「完璧な戦略」が要求されるのではなく、競合との間の相対的な戦果が求められる。つまり、優れた企業戦略とは、受入可能なコストで競争相手に何歩も先んずることができる戦略をいうのである。戦略家として進むべき、競合他社との相対的な地位強化の道は4つある。
(1)KFSに基づく企業戦略
関連産業ないし企業の「成功のカギ」(KFS)を見定め、他社に対して最も効果的に戦略的優位に立てる特定の分野へ経営資源を集中的に注ぎ込む。
(2)相対的な優位性に基づく企業戦略
目標の競合相手と直接に競合していない製品の技術、販売網、収益性などを材料に工夫するか、自社と相手の間の資産構成の相違点を見出し活用する。
(3)攻撃的なイニシャティブに基づく企業戦略
ゲームのルールを変え、現状を打破し、それによってまったく新しく、また強力な優位を勝ち取るべく、挑戦する。
(4)戦略的自由度(SDF)に基づいた企業戦略
競合他社がまだ手を付けていない特定領域に押し出して、市場の利益を享受するものだ。これには新市場を開く、新製品を開発する、などが該当する。
KFSを見定めることは、いつも容易にできるとは限らない。しかしその発見には基本的に2つの方法がある。
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