企業戦略とは、未来を形づくることだ。戦略は、目標や意欲を達成する方法を具体化するために使われる。
組織の多くは将来を見据えて壮大な計画を立て、この計画はトップダウンで組織に伝えられる。だが、たいていは中間管理職まで届くとそこで止まってしまう。最前線で働く社員にこそ、戦略計画に合わせた体制、プロセス、役割が必要なはずなのに、「壮大な計画をトップダウンで伝える」という旧式のやり方では、肝心の社員に計画が伝わりにくい。
一方、現実は予測不可能な出来事に満ちているため、計画を立てても無意味だと考える人もいる。組織を効率的なものにすれば、不測の事態にも自ずと適応できるようになるというのだ。だが、実際にはこうしたなりゆきまかせの方法では、企業が市場に適応するために必要なことに取り組むようになるのは難しい。
優れた戦略とは、これらの中間を行くものだ。未来を具体化するために明確な意図を持った行動を計画しつつ、同時に目の前の現実にも対応していくのである。そのためには、次の4つの「戦略に関する基本的な質問」を検討することがカギになる。
・目標は何か?
この問いによって、「会社にとって望ましいもの」を明確にすることができる。組織が目標を達成するためにはさまざまな選択肢があるが、それらのなかには矛盾し、相反するものも少なくない。目標の確認は、戦略的な思考をするうえで、きわめて重要だ。
・可能なことは何か?
チャンスを前にすると、過去以上のことができるという感覚が生じやすい。だが、チャンスは、組織がすでに持つ(あるいは獲得できる)資源を考慮し、他社や市場環境などの現実に鑑みたうえで検討すべきである。
・目標達成のために何ができるか?
リーダーシップや組織体制、プロセス、プロジェクト、タスク、役割、製品、サービスなどを連動させ、相乗効果を生み出すことが大切である。
・新たな機会に反応し、計画を修正すべきタイミングはいつか?
未来は完全には予測できない。それゆえ、私たちは次に何が起こるかわからない状態で計画し、決定を下さなくてはならない。
イケアの創業者、イングヴァル・カンプラードは家具メーカーの近くに住んでいたので家具の販売を始めたが、ライバルの圧力によって商品の仕入れができなくなってしまった。すると次は自社ブランドの生産を開始。ショールームが火災で焼けてしまった際には、巨大なショールームを再建し、顧客が増えてサービスが追い付かなくなると、セルフサービス方式を採用した。イケアの戦略は、予想外の大きなトラブルに柔軟に反応することだったと言えよう。
計画は予測に基づいて策定するしかないが、将来何が起きるかは、完全にはわからない。そのため、計画には限界がある。賢い戦略家は、トラブルに反応することで、戦略の実現を導くものだ。良い反応こそが、優れた戦略をつくるのである。
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