私たちは、物事をつい先延ばしにしてしまう原因を、意志の弱さや行動力のなさにあると考えがちだ。だが、すぐ動けないのは能力や性格、やる気の問題ではない。私たちの脳が面倒くさがり屋だからだ。
脳は、生命維持のため、できるだけ変化を避けようとする性質がある。動けないのは、脳の防衛本能が、私たちの行動を抑制しようとするからだ。
では「すぐやる人」になるためにはどうしたらいいか。鍵となるのが脳の中にある「側坐核」である。側坐核は、行動力の源となるドーパミンというホルモンを分泌するが、ドーパミンを分泌させるためには、側坐核に刺激を与えなければならない。側坐核というスイッチは、行動に着手することではじめてオンになる。
だから「すぐやる人」になるためには、まず行動することがポイントだ。この章では、行動に初速をつけ、すぐ動けるようになる方法を紹介する。
思うように動けない人には「ちゃんと決めてから動きたい」「失敗しないようしっかり計画を立てたい」という心理がある。もちろん準備は必要だが、考えることばかりに時間とエネルギーを注いでしまい、結局動けないままでは意味がない。
そんな人には、「仮決め・仮行動」という方法を試してみてほしい。筋トレを始めたいと思っているけれど「ジムに通うべきか、自宅でトレーニングするか」「トレーニングウェアやシューズを用意しなければ」と立ち止まっているなら、とりあえず動きやすい服に着替えて、5回でも10回でもいいから腕立て伏せや腹筋をしてみる。
こうしてやってみると、「腕立て伏せが10回もできなかった」という結果になるかもしれない。これは失敗ではなく、行動して得られた成果だ。軌道修正して、1日3回から始めればいい。
仮決め・仮行動をしたいのに、体が動いてくれない――そんなときに有効なのは、10秒でできる「10秒アクション」だ。ランニングを始めたいなら「シューズを履く」「ランニングウェアに着替える」ことだけをやってみる。
10秒アクションの段階で失敗する人はいない。失敗しないからこそ、10秒アクションがきっかけとなって、その後の行動にもつながるのだ。
10秒アクションという小さな一歩でも、側坐核を刺激できる。まずは10秒だけ動いてみよう。やる気は後からついてくる。
自転車で公園に行ってランニングをしようとしていたのに、自転車がパンクしてしまった。近所の自転車店に電話すると、今日は臨時休業。結局、ダラダラ過ごしてしまった――。予想外のトラブルが重なると、私たちは思うように動けなくなってしまう。
私たちを動けなくする「行動ブレーキ」を外す方法は、「原因を特定して、阻害要因を排除する」と「目的にフォーカスすることで、阻害要因の影響を小さくする」の2つだ。先ほどの例で言えば、前者は、バスや電車、タクシーなどといった別の手段を使って公園に行くこと。後者は、公園ではなく近所をランニングすることになる。私たちのまわりに潜み、集中力を下げる行動ブレーキは、こんなふうに簡単に外すことができる。ここでは、行動ブレーキを外すためのさらに具体的な方法をお伝えしよう。
せっかくやる気になったのに、必要な本が見つからない。ハサミを探しているうちに別の作業を始めてしまい、やるべきことが終わらなかった――。
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