人生は短い。80歳まで生きるとして、あなたの人生はたったの4000週間だ。90歳まで生きても4700週間、歴史上もっとも長生きした人と同じ122歳まで生きたとしても、6400週間にすぎない。
人生はこんなに短いのだから、時間をうまく使うことは人類の最重要課題である。僕たちは、時間をもっと現実的に見つめ、バランスを見直すべきだ。ものすごく短くて、きらきらと光る可能性に満ちた、4000週間という時間を。
これほどまでに忙しくなった現代において、「時間が足りない」なんて今さらの指摘だ――。そう思う人もいるだろう。現代人は誰しも、限られた時間のなかで、増えつづける仕事をなんとかさばこうとしている。
だが、忙しさは問題の入り口にすぎない。問題の本質は「限られた時間を思うように活用できていない」という感覚にある。しかし、どんなに工夫してより多くのタスクをこなすことに成功したとしても、以前よりもさらに忙しく、かつ空虚な気分になるだけだ。すぐに別のタスクが積み上がっていくのだから。
僕たちは、効率を追求すればするほど、「本当にやるべきことをやっていないのではないか」「もっと充実した時間の過ごし方があるのではないか」という感覚に襲われる。仕事をいくら効率化したとしても、人生で本当にやるべきことをやりはじめる日なんてやってこないのだ。
もしあなたが中世初期のイギリスの農民に生まれていたら、ある意味でもっと幸せだったかもしれない。なぜなら、その時代には「時間」が存在しなかったからだ。1日の長さは季節によって変わるし、自然を相手にする仕事は、効率化するにも限界がある。
その後、時計が発明されて「時間」という概念が生まれたことで、労働は時間によって管理され、労働者を効率よく働かせる必要が生じた。生活そのものだった「時間」は、生活から切り離されて「使う」ものとなり、さらには支配しコントロールするものと変化したのである。
現代人は、タイムマネジメントによって、時間を完璧にコントロールできるという幻想に縛られている。だが、時間をコントロールしようと思えば、時間のなさにいっそうストレスを感じる。制約から逃れようとすることで、より制約に縛られてしまうのだ。
それならば、制約に逆らうのではなく、制約を味方につけるべきだ。まずは「自分には限界がある」という事実を受け入れよう。そうすれば、無駄に自分を責めずにすむ。大切なのは、何に集中し、何をやらないかを意識的に選択することだ。
現代人は、自分ができるよりも多くのことをやる必要に迫られている。だから僕たちはタイムマネジメントにしがみつき、「もっとうまいやり方さえ身につければもっとたくさんのことができるようになる」と信じている。
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