「よきマネジャーは、よきコーチである」。Googleで人材開発に携わった著者が本書で伝えたいメッセージだ。ここでのコーチは、「チームのメンバー一人ひとりの目標達成をサポートし、成長を促す存在」を指す。その役割を通じて、会社全体にいい影響をもたらしていくことも、コーチングの目的である。
コーチングは、それを受ける人がコーチのサポートを積極的に受け入れ、サポートを自ら求めて変わることができる、「コーチャブル」な状態であるのが理想だ。そのためにも、コーチは常に仕事の本質を言語化し、メンバーが最高のパフォーマンスを出せるように「プロセス」をサポートし続けなくてはならない。
そこでコーチがやるべきことは、「問いかけ」と「フィードバック」だ。その二つのスキルを組み合わせ、メンバーの成長を支えていく。その役割を果たすために重要なのは、お互いの理解を深め合うことで行動の変化を作り出していく「創造的な会話(対話)」だ。「問いかけ」は対話を促し、相手の思考レベルを底上げする。それと同時に「フィードバック」を行うことで、「評価や改善点などを伝え、相手の成長を促す」。
問いかけとフィードバックを駆使するコーチングは、自分の経験を押し付けるのではなく、相手の気づきを促したり、考えを整理する手助けをしたりする。そうしてメンバーが「自分で答えを見つける」ことを大事にするのだ。
メンバー自身が頭を整理できるよう、決めつけないで対話を始めることが重要となる。うまくパフォーマンスが出せていない人がいるなら、基準に達していないという前提から入るのではなく、何がボトルネックになっているかの現状認識の確認から始める。
コーチングの基本は「人に優しく、結果に厳しく」だ。返答に対して「それ本当?」といい意味で疑い、あれこれ対話をする。好奇心を持って相手に意識を集中することで、メンバーの言葉の裏にある意図や深層心理まで探っていく。
「本人も気づいていない何かが眠っている」ということを前提にして相手の真意を探る。そのためには言葉づかいに気をつけながらも、できるだけ率直に話したほうがよい。
メンバーが怒ったときは、その人の価値観を知るチャンスだ。「あなたはこれを大切にしているんじゃないの?」と、本人にとっての大事な気づきが得られると、信頼感も増し、「共に結果を出していく仲間」になっていける。
「自分にはこういう面もあったんだ」という気づきは、「人間は変われる」というグロース・マインドセット(成長思考)のスタートになる。そうした気づきの積み重ねがコーチャブルな態度を育み、さらなる成長につながるのだ。
創造的な対話は「問いかけ」から始まる。効果的に用いることで相手の考えるレベルを引き上げられる。
問いかけの準備として、相手の視点を知ることは欠かせない。相手の話に耳を傾け、「ニーズや問題、不安に思いを巡らし、相手の現状を知ろうと努める」。
相手の話を聞いて返答するまでの間には、「解釈」と「評価」というプロセスがある。これを著者は「対話(創造的な会話)」と呼ぶ。話し手が言おうとしていることに対してすぐに自分の意見を返すのではなく、聞いたことを一つひとつ自分の言葉にして相手に確かめながら、相手に対する理解を深める作業が「対話」なのだ。
効果的にコーチングを行うには、相手と良好な関係、「ラポール(共感に基づく信頼関係)」を築くことが大切だ。
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