ファシリテーターの役割は、活発な議論を促したり、対立する意見を調整したり、会議をスムーズに進行させたりすることだ。これはサッカーにおけるボランチの役割に似ている。ボランチは、その日のスタメンによって攻撃的な動きが求められる場合もあれば、守備に専念すべきときもある。こうした働きは、状況によって立ち回り方を変えるファシリテーターの役割そのものだ。
ポイントは、その場の顔ぶれによって柔軟に対応すること。声が大きく口数の多い人がそろっている場合は進行に徹し、おとなしめの参加者が多い場合は自ら意見を述べて議論を活性化させる。ファシリテーターが立場を柔軟に変えることで、議論がより効率的かつ機能的なものになるだろう。
ファシリテーターがうまく質問することで、議論の流れが見えやすくなり、会議も円滑に進む。その一方で、質問のタイミングには気をつけなければならない。
たとえば人が饒舌に話している途中で、「それは〇〇ということですか?」と口を挟むと、その人がもとの話に戻れなくなってしまうことがある。このように、質問によって相手の話を妨げてしまうのは避けたい。
明確に言いたいことがありそうな人に対しては、質問形式で口を挟むのではなく、「〇〇さん、どうぞ」とか「では〇〇さん」と名前を呼ぶだけで十分だ。むしろそのほうが場の流れを損なわず、議論にテンポ感を出せる。
会議は「大なわとび」のようなものだ。ファシリテーターが縄の回し手で、参加者は跳ぶ人である。ファシリテーターが回す縄の中に、次々に人が入ってくるイメージだ。
理想は、参加者たちが輪の中に入ったり出たりしながら、心地よく跳び続けられること。うまく輪に入れない人がいれば「少しゆっくり回しますね」と声をかけ、入りやすくしてあげる気配りも、ファシリテーターには求められる。メンバーの様子に気づけるよう、一人ひとりをさりげなく観察しておこう。
とくに一部のメンバーだけがヒートアップしていると、ほかの参加者は議論に入りにくくなる。そんなときは「ところで、この件について、〇〇さんはどう思いますか?」「そろそろ〇〇さんや△△さんのご意見もうかがってみたいですね」などと声をかけて、ほかの参加者に発言を促す。一部のメンバーが議論を牽引するのは決して悪いことではないが、参加者全員に出番が回ることを常に意識しておきたい。
参加者が話しやすい雰囲気を作ることもファシリテーターの重要な役割だ。
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