オンラインコミュニケーションの機会が増えた今、説明力の重要性はいっそう増している。なぜなら、声の大きさやその人の雰囲気などといった非言語情報は、オンラインでは伝わりにくいからだ。これまで身体の動きや雰囲気でごまかせていたことも、しっかり言葉にする必要がある。
だから現代においては、言葉で相手にわかりやすく伝えられる「説明力」の有無で、仕事でも私生活でも大きな差がつく。結果の9割は説明力の有無で決まるといっても過言ではないほどだ。
説明がわかりにくいと、時間やストレスといったコストがかかるだけでなく、意図したことが違った形で相手に伝わってトラブルになるリスクもある。誰しもこうしたコストやリスクは避けたいだろう。裏を返せば、わかりやすく説明するだけで、相手から選ばれやすくなるということだ。
わかりやすく説明する秘訣は、相手を知ることと、説明の目的やシチュエーションに合わせて話を組み立てることである。伝えたい内容を最適な順序で組み立てれば、説明のわかりやすさは格段に上がる。
本書では、誰でも説明上手になれる80の型が紹介されている。要約ではそのうち、「基本の3つの型」を含めた11の型を取り上げる。
「CRF法」「SDS法」「PREP法」は、ビジネスにおける基本の型である。
CRF法は、30秒から1分ほどの短い時間で自分の主張や提案を伝え、相手から了解を引き出したいときに使える型だ。ポイントフレーズは「結論としては●●で、その根拠は■■です」。3ステップから成り、自分の主張や提案の「結論(Conclusion)」を伝える→結論の根拠となる「理由(Reason)」を添える→理由を下支えする「事実(Fact)」を提示する、という形で話せばよい。
SDS法は、概要だけを相手に覚えてもらいたいときに有効な型だ。ポイントフレーズは「本日の概要ですが……」で、これから説明する内容の「概要(Summary)」を伝える→説明内容の「詳細(Details)」部分を伝える→説明内容の「まとめ(Summary)」を伝える、という流れである。会議などで使ってみよう。
PREP法は、プレゼン・会議・報告でシンプルに使える基本の型だ。ポイントフレーズは「まず、結論からお話ししますと……」。自分の主張や提案の「結論(Point)」を伝える→結論の根拠となる「理由(Reason)」を添える→理由のイメージが湧く「具体例(Example)」を出す→再度、「結論(Point)」を提示する、という形で進める。
伝えたい情報量が多く、数十分間に及ぶ説明の場合には、「アウトライン」の型が有効だ。本の目次や会議のアジェンダ、レジュメ、学校教育や人材育成のカリキュラムなどは、この型を使っている。
ポイントフレーズは「全体の流れは●●。今は▲▲。本日は■■までいきましょう」。「全工程は、この7つの流れで進んでいきます。現在は、3つ目の工程まできています。ですので、今日の夕方までに5つ目の工程まで完了することを目標としましょう」といった具合だ。
まず全体の流れを伝え、次に相手の現在地を示す。相手を混乱させないよう、あくまで現在地の情報に留めることが重要だ。
最後に目標地点を定める。そうすれば、相手は安心してゴールまで走りきれるだろう。目標地点は、相手が頭の中でイメージできるレベルまで落とし込むことが重要だ。
話や説明が長いときには「振り返り」の型も有効だ。ポイントフレーズは、「ここまでまとめると●●になります。続いては……」である。「内省」を促すことで、相手はそれまでの説明を咀嚼することができるため、理解が深まるのだ。
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