話し方で一番重要なことは、「いかに上手にしゃべるか」「言いたいことをどう言うか」ではない。話の受け止め方、すなわち聞き方だ。聞き方がしっかりしていれば、会話で失敗することはない。
よくある聞き方の例を見てみよう。
「先日の件、あれだけ時間をかけて練り上げたのだから、最初の企画を通したいですよね」→「でもさ、現実的には難しいよ」→「……」
このように、聞き手が話し手の言葉に対して「いや……」「でもさ……」などと否定から入ってしまう場合がある。自分の発言を否定されたら、「わかってもらえない」「話してもムダだ」「この人とは仲良くなれない」などと感じるだろう。その結果、相手の話が耳に入ってこなくなり、最終的には感情的になったり、話がこじれてしまったりする。
こうした事態を防ぐためには、「相手の気持ちを受け止めるつなぎ言葉」を使うとよい。相手の言葉に反論したくても、まずは「たしかに」「そうなんですね」「わかります」などといった言葉で受け止める。こうした言葉が聞けると、相手は安心できるし、そのあと反対意見が出てきても受け入れやすくなる。
先ほどの会話も、聞き方を変えれば次のようなものになるだろう。
「先日の件、あれだけ時間をかけて練り上げたのだから、最初の企画を通したいですよね」→「たしかになぁ。たいへんだったよね。特に君はよくがんばっていたね」→「そうなんですよ。……もちろん現実的には難しい部分もあるかもしれないですけど」→「そうだね、もう一工夫が必要かもね」
また意見交換や議論の場では、「……ああ、今の話は勉強になったなぁ」と自分につぶやくように締めくくる技が有効である。相手に安心感と「認められた」という満足感を与えることができ、話し合いが円滑に進むだろう。
明快で論理的に、わかりやすく話すことは重要だ。だが最初から最後まで明快で論理的だと、相手が反論したり発言したりする余地がなく、「イヤなやつ」という印象を与えかねない。
そのような印象を与えないためには、論理的な説明のあとに「……なんてね」「……なーんて考えてるんですけど」「……って思ったりするんですけど、どう感じます?」など、柔らかい印象の語尾をつけるとよい。そのあと、相手の意見を聞くようにする。
人間は、最後に受け取った情報に注目するという特徴がある。だから、最後にやわらかさを加えてソフトな印象にすると、話を受け入れてもらいやすくなるのだ。
このテクニックは、特にこちらが「正論」を言っている場合ほど効果を発揮する。攻撃的な印象にならないように、ソフトに「なんちゃって」と言ってみよう。
聞き方のテクニックとして、「整理オウム返し」を紹介しよう。通常のオウム返しは、相手が言ったキーワードを拾って繰り返すものだ。一方「整理オウム返し」は、相手と一字一句同じ言葉を使う。
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