あなたはこんな場面に心当たりはないだろうか。部下が上司に「部長、今、少しよろしいですか?」と聞くが、「今バタバタしているから、後で来てもらえる?」と言われる。部下が1時間後に再び部長のもとを訪ねると、秘書から部長はすでに欧州の出張へと向かい、そのまま休暇に入ると告げられる。2分ですむ要件なのに、部長と直接話せるのは2週間後だ。
または、こんな場面はどうだろうか。20人を超える参加者がいる会議で、話しているのは1人の「最上位者」だけ。沈黙が流れては最上位者が話す、の繰り返しで、1時間を予定していた会議は2時間たってようやく終わった。ほとんどの参加者は内心「誰かあいつを止めてくれ……」と思っていたが、じつは1人で話していた最上位者も同じ心境だった。「なんで誰も発言しないんだ。誰か俺を止めてくれ……」
こうした状況は、時間、コスト、もっと本質的な仕事をする機会を奪っている。このもったいない状況が起きる原因を、著者は日本の伝統的な美徳である「礼儀や丁寧さ、感情面への厚い配慮」が裏目に出た結果だと考えている。最初の場面では、忙しそうな部長を気遣い、礼儀をもって「今よろしいですか」と言ったことで2週間を棒に振っている。次の場面では、他の人の発言を期待している「最上位者」に、他の20人が遠慮した結果、全員の2時間を無駄にしてしまった。
まじめであればあるほどパフォーマンスが上がるというのは勘違いだ。スポーツ心理学の世界では「逆U字」と呼ばれる仮説がある。縦軸に「パフォーマンス」、横軸に「マジメ度(心的エネルギー=ストレス・緊張)」をとると、グラフは逆Uの曲線を描くという仮説だ。つまり、ある程度まではまじめにやればやるほどパフォーマンスが上がっていくが、パフォーマンスがピークに達すると、その後はまじめにやればやるほどパフォーマンスが下がっていくことになる。
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