感情は、日々のあらゆるシーンで生まれては消えていく。なんとなく落ち込んだり、嬉しくなったりしても「私は今、どんな気持ちなのか?」と自問せず、その多くを漠然とやり過ごしている。一方で、強い感情が沸き上がったときは、その感情がすべての時間と空間を支配してしまうことがある。嬉しい気持ちになったことがあった日でも、その日の終わりに「しんどい」が一番強い感情であったら、「しんどい1日だった」と思ってしまう。感情はこれほどにもあいまいなものだ。
編集者である佐渡島氏にとって、感情はストーリーやキャラクターを描く際の重要な要素だ。ところが、自分自身の感情や、感情そのものの定義について長年無頓着であった。「怒りや悲しみに対処する方法」のように、感情をマネジメントしたりコントロールしたりするための情報はいくらでも見つかる。しかし、「自分にとっての怒りとは?悲しみとは?」を理解することは別の問題だ。
「感情」とは何か。感情の一つひとつを認知し、解像度をどれだけ高められるか。もし自分の感情を細かく認知できるようになれば、あらゆるアウトプットが確実に変わる。まずは、私たちは多くの感情を見逃しているのだという事実を知ることから始めよう。
「感情は、すぐに脳を乗っ取る」は共著者の石川氏の言葉だ。
佐渡島氏が感情を意識するようになったのは、経営者になってからのことだ。重要な意思決定のたび、感情が強く揺さぶられる。「ビジネスの意思決定に、感情を持ち込まない」が一般的なセオリーだが、現実はそううまくいかない。自分の中で生まれた感情にはすべて意味があり、どんなに抗っても感情と脳を切り離すことは不可能だ。あらゆる感情は、自分の行動や意思決定に影響する。
インプットもアウトプットも、感情から影響を受けている。だから、感情を正しく認知できれば、インプット・アウトプットともに質を上げることができるはずだ。感情をコントロールしようとするよりも、表層的な感情の先にある本質を理解し、正しく認知しようとするほうが自由に生きていけるし、より多くの世界を覗くことができるだろう。
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