著者はアニメ・漫画オタクである。小学生で『らんま1/2』に出会って以来虚構の世界に没頭し続ける学生時代を送り、人と会話する機会がない、アニメ以外の話題もない「コミュ障」になっていた。そんな著者は、今ではコクヨで「働き方コンサルタント」「働き方改革プロジェクトアドバイザー」を名乗りながら、大手企業や官公庁を対象に、ノウハウ提供を行なっている。
著者の働き方が「買われる」ようになったのは、「オタク」だったおかげだ。コクヨに入社し営業職に配属されると、仕事は楽しく残業も苦ではなかった。しかし、問題があった。アニメを観る時間がなかったのだ。日本には観るべきアニメがたくさんある。せめて1日4〜5時間はアニメ鑑賞の時間を取りたいと思うと、18時には会社を出て帰宅しなければならない。
そこで、著者は自分の働き方を変えることにした。商談議事録はオフィスに戻ってからではなく商談しながら作成。エクセルのマクロ機能を使って資料作成時間の短縮も行った。さらに、当時まだ珍しかったウェブ会議を活用して移動時間を軽減し、「会いに行く営業ではなく来てもらう営業」を行うセミナー型集客営業スタイルを実施するなど、様々な試みを実施した。軋轢や失敗もあったが、「自分の働き方改革」の結果、残業を減らしつつもノルマを達成し、アニメ鑑賞時間を増やすという成果を生み出せた。そして、「その働き方をうちの社員にも広めてほしい」と声がかかったのが、働き方コンサルタントになるきっかけだった。
日本中で働き方改革がブームになる中、著者の中には変わらぬ信念がある。それは、働き方改革の本質とは、「自分で自分の働き方を変えることから始まる」ということだ。オフィスを消灯して早めの帰宅を促したり、フリーアドレスを導入したり、フレックス制度や副業制度を導入したりして「仕組み」を変えようとするだけでは、本質的に働き方を改革することはできない。自分で自分の仕事を見直し変える、「私のための私による『私の働き方改革』」でなければならないのだ。国や会社・組織の目線に立った改革ではなく、私はどう変わりたいのか、そのために何をすればいいのかを最も重視しなければならない。自分で自分を変えていくことは、それ自体がエンターテインメントとなるだろう。ぜひ、自分の働き方改革を楽しんでもらいたい。
2010年代後半以降の「働き方改革」の取り組みは、残業削減や労働時間短縮が中心だった。しかし、当然のことながら、残業を減らしたからといって、仕事の成果が高まるとは限らない。
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