まもなく入社2年目になる石川マサルは、全社会議に参加していた。新人賞を取った同期がスピーチをしているところだ。いつの間にこんなに差をつけられたのだろう。
マサルが所属するチームのリーダー、田辺ノリコも、同じく心の中でため息をついていた。新人時代は同期トップの成績で、早々に昇格。しかし「リーダーである自分は売れるが、それ以外のメンバーは伸び悩む」という壁にぶつかったまま、チームは目標未達が続いている。会議を終えた2人は顔を見合わせ、気晴らしに飲みに行こうと決めた。
そんなとき、後ろから「飲みに行くんだったら、僕も一緒にいいかな?」と声をかけられた。マサルとノリコの新しい上司になる、神日原(カピバラ)部長だ。カピバラのような雰囲気でありながら、敏腕マネジャーとして高く評価されている人物である。
本書は、カピバラ部長の指導のもと、マサルとノリコが「質問力」を磨いていくというストーリー形式で進行していく。
マサルは、ノリコたちから「とにかく訪問件数を増やせ」と言われてがんばっているが、なかなか結果につながらないのが悩みだ。その話を聞いたカピバラ部長によると、マサルは、商談を進めたり、お客様と関係を構築したりするコツがつかめていない。営業活動において何より大切なのは、お客様を喜ばせ、「提案を聞く価値がある」と感じてもらって、商談に持ち込むことだ。
お客様を深く理解し、役に立てると、相手との関係が深まる。すると相手のことをもっと深く知れて、ますます役に立てる――。このサイクルが回っていくと、「具体的な見積もりが欲しい」などと声がかかるようになり、自然と売り上げ目標が達成できるようになるはずだ。
お客様と関係を深めて商談を前に進めるには、「質問力」が鍵になる。カピバラ部長がそう言うと、マサルは「質問してもお客様の反応が悪く、つい一方的に話してしまうんです」と悩みを打ち明けた。
いつの間にか2人は、カピバラ部長の話に身を乗り出している。そんな姿を見た部長は、定期的に「質問力」を上げるための勉強会を開催してくれることになった。
マサルは、お客様にアポイントを打診しても「忙しいから」と断られてしまいがちだ。それに「いつ頃ならお時間できそうですか?」と切り返すと「必要になったときにこちらから連絡します」と言われてしまい、結局アポイントが取れない。
そう相談すると、カピバラ部長は「営業プロセスの第一歩は、お客様のやりたいことや課題に対して、当社サービスがお役に立てる可能性を示すことだ」「アポイントが取れない原因は、お客様から、やりたいことの実現・課題の解決にその営業が役立つと思われていないことにある」とアドバイスしてくれた。
アプローチの鍵は、「お客様のやりたいことや課題は何なのか」を話題に出して、「お役に立てる可能性」を具体的に伝えることだ。例えば「以前参加いただいたセミナーのフォローでお電話する」場合なら、このようになる。
「セミナーのアンケート回答で『集客について課題がある』と書かれていらっしゃいましたが、集客については、今も取り組まれているのですか?」→「今も取り組んでいますが、バタバタしておりまして、うまく進んでいません」
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