本物の交渉術

あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」
未読
本物の交渉術
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あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」
未読
本物の交渉術
出版社
出版日
2021年12月16日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「交渉は好きで得意だから任せてほしい」。そう明言できる敏腕交渉人は、日本ではかなり希少な存在ではないだろうか。

実のところ、上司や同僚とのやりとりといった身近な場面でも、小さな交渉がいくつも生じている。「この(誰もやりたくない)仕事を誰がやるか」を決める話し合いに居合わせると、要約者は少しの緊張感と居心地の悪さを感じてしまう。

交渉というと、切った張ったの非情な言葉の闘いを思い浮かべるかもしれない。本音は一切出さず、相手のすきを突く真剣勝負という印象を抱く方もいるのではないか。

しかし、本書はそんな交渉観をガラリと変えてくれる。相手に「自分が勝った」と思わせる交渉こそ、本物の交渉術が目指すものだという。イギリス生まれのアメリカ人である著者は、ビジネスの成功においては長期の良好な関係維持が重要だと考える。著者は、自分だけが勝ったのではなく、相手にも勝ったと思ってもらえるような交渉をするための原理原則やテクニックを数多く紹介してくれている。

相手と良好な関係を維持し、WinWinを目指しながらも、しっかりと成功の果実を勝ち取る交渉術を学びたい。そんな願いを抱く方に本書をおすすめする。パワーネゴシエーションの奥義を味わってみてはいかがだろうか。

ライター画像
Keisuke Yasuda

著者

ロジャー・ドーソン(Roger Dawson)
交渉術に関する米国内トップ講師。カリフォルニア州最大の不動産会社経営を経て、1982年以来プロ講演者としてアメリカ、カナダ、アジア、オーストラリアで経営陣や営業担当者向け研修を行う。全米プロスピーカー協会の最高賞であるCSPとCPAEの両方を受賞した世界でも数少ない講演家。交渉術や説得術に関する著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    交渉にはルールがある。序盤・中盤・終盤で適切な仕掛けをし、相手に「自分が勝った」と思わせて交渉を終えれば、良い関係を維持できる。
  • 要点
    2
    ポイントは相手に最初の提案をしてもらうことだ。質問を恐れず、相手のことを十分に知るようにしたい。
  • 要点
    3
    「どちらか一方しか勝てない」という思い込みを捨て、双方が協力して解決策を作り出せる状態にしたい。
  • 要点
    4
    重要なのは相互利益の交渉術である。「相手から何を得られるか」ではなく、「自分の立場を崩さず、相手にとって価値あるものを与えるにはどうしたらいいか」を考えよう。

要約

交渉の流れとギャンビット

オープニング・ギャンビット「あなたの気持ちはよくわかる」
Ivan-balvan/gettyimages

本物の交渉術は、チェスのように一定のルールに基づいて行うものだ。著者は、何千人もの生徒から交渉経験に関するフィードバックを受けてきた。それにより、相手が交渉術の一手にどのように反応するかがわかるようになった。

まずは、交渉の初期段階で交渉を成功させるために必要な条件を整える「オープニング・ギャンビット(序盤の仕掛け)」を紹介しよう。チェスをする人は、ゲームの戦略的な動きをギャンビットと呼ぶことに馴染みがあるかもしれない。ギャンビットはある程度のリスクを伴う。だが、適切なタイミングで使えば、リスクを最小限にし、交渉で優位に立てる。

交渉の最初数秒間に発した言葉が、その交渉の雰囲気を決めることも多い。始まりの言葉には気をつけるべきだ。相手が自分の意見に全く同意しない対立的な立場をとった場合も、議論してはいけない。対立すると、相手は自分の正しさを証明したいと考えるようになる。

まずは相手に同意し、感じる・感じた・見出した(Feel, Felt, Found)を使って切り返すといい。相手から「価格が高すぎる」といわれたら、こう返そう。「あなたの気持ちはわかります。多くの人が同じように高いと感じたはずです。しかし、よく私たちが提供するものを“観察”していただくと、最高の価値を提供していることに気づいていただけます」。相手に反論せず同意することで、競争心が和らぎ、冷静さを取り戻しやすくなる。

ミドル・ギャンビット「私に決定権はない」

次は中盤の仕掛け、ミドル・ギャンビットの出番だ。序盤の勢いを持続し、相互の動きで生じた圧力に対応する方法をマスターしよう。

交渉で最も苛立たしいことの1つは、最終決定権がない相手との交渉だろう。本物の交渉術を使いこなすパワーネゴシエーターは、自分には決定権がないように見せる。相手は、あなたが決定権を持っていると知ると、あなたを説得すればいいのだとわかり、それほど努力する必要がないと考えるようになる。だが、経営陣や取締役会の承認を得なければならないのなら、そうはいかない。相手はあなたを納得させ、上層部を説得したくなるように、よりいっそうの努力を求められる。

では相手が「自分には決定権がない」と主張する場合、どうすればよいだろうか。まずは「経営陣は、いつもあなたのおすすめを受け入れてくれますね」などと伝え、相手の自尊心に訴えよう。

次に上層部に推薦するという約束を取りつける。そこで異論が出れば、その理由を探っていく。無関心は問題だが、異論は購入意欲があることのシグナルだ。

最後に特定の理由で相手が提案を拒否できる条件をつけ、書類作成を提案するとよい。そうすれば相手が拒否する理由が明確になり、相手の決断を促せる。本物の交渉術では、上層部の権威移譲を使いこなすことが重要となる。

エンディング・ギャンビット「かじって、最後に譲る」

エンディング・ギャンビット(終盤の仕掛け)では、自分が欲しいものを手に入れ、相手に「自分が勝った」と思わせて交渉を終える。交渉下手な人は、相手に「負けた」と思わせて席を立たせてしまう。相手との良い関係性を維持したいものだ。

パワーネゴシエーターは、すべてに合意したあとで少しでも多くのものを得るため、ニブル(かじる)という仕掛けを使う。

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要約公開日 2022.03.25
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