2021年6月、著者は自ら創業した日本電産のCEOを後任に譲った。今後も会長として経営に関与していくものの、創業してから48年間途切れることなく務めてきた職を、初めて譲ることにしたのだ。
たった4人で日本電産を創業したのは、著者が28歳のときのことだった。仕事がない、資金が足りない、人材が採用できないなど、悩みごとは尽きず、つねに景気に翻弄されてきた。
それでも「兆円企業をつくる」という気概と執念だけは誰にも負けなかった。そして創業から半世紀を経て、日本電産は、世界に300社を超えるグループ企業を擁し、従業員11万人を超える「世界一の総合モーターメーカー」になった。
2008年にリーマン・ショックが起こったとき、著者はすぐに図書館に向かった。1929年の世界恐慌を乗り切った会社を分析すれば、生き残り策が見つかるだろうと考えたからだ。
片っ端から本を読んでいくと、思ったとおり、生き残った企業がいくつか見つかった。そうした企業を分析し、いまの時代に通用する法則を探した結果、リーマン・ショックを乗り切ることができた。
困難は必ず解決策を連れてくる。困難がやってきたときは、逃げずにその解決策をつかみとることだ。厚い壁がたちはだかっているなら、それを打ち破るか、乗り越えなければ前には進めない。そこで経験したことは、それ以降の成長を支える糧となってくれるはずだ。
著者は子どもの頃から「一番になること」だけを考えてきた。将来は社長になると決めていたし、会社を創業したときも「世界一のモーターメーカーをめざす」という大きな夢をもっていた。
一番をめざすからこそ気概が高まり、実力が磨かれるものだ。だから創業以来、幹部や従業員、そして自分をも「一番をめざせ」「一番以外はビリと同じ」と鼓舞し続けている。
製品の品質や精度、シェア、マーケティング力、人材も、一番であることが必要だ。「二番でもいい」と考えたら、あっという間に三番以下になってしまうだろう。
一番をめざすためにやるべきは、その分野のトップを研究し、真似ることだ。一から始めたのでは時間がかかってしまい、時代についていけない。真似をし、そこに独自の強みを注入することで、世界一になることができる。
一番をめざすためには、身を投じる分野を慎重に選ぶことが大切だ。
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