著者はかつて、クロスファンクションの組織改革とマインド&スキルシフトによりV字回復を遂げた日産自動車に勤務していた。その経験から、日本の組織の停滞感や危機感を解消するための1つの解として、「越境」を提唱している。
越境はこれからの組織とそこで働く個人にとっての必須スキルといってもよい。越境は、組織や立場を越えてつながり、課題を解決する、あるいは新たな価値を創造することに役立つためだ。
ではなぜ、いまの時代に越境が必要なのか。それは現在が「過去に答えがない時代」であり、「組織の中に答えを求めにくい時代」「その組織単独で勝てない時代」であるためだ。労働人口の減少が加速する中、社内に答えや解決能力を持つ人がいるとは限らない。そんな時代においては、アイデアを持つ外の人とつながって解決できる能力、越境スキルが求められる。組織単独のスタンドアローンではもはや勝つことが難しい。組織も個人もクロスファンクション(組織横断)/クロスボーダー(越境)で答えを導き出すスタイルへと変容していく必要がある。
本書では越境のきっかけを3つの観点で整理している。
1つ目は「テーマでつながる」。組織風土を変えたい、ツーリングが趣味など、課題や関心事を通じて共感者とつながるアプローチだ。
2つ目は「立場でつながる」。課長同士や人事担当者同士など、近しい職位や職責を担う立場の人を見つけるアプローチだ。
3つ目は「ライフステージ/ライフスタイルでつながる」。育休者同士、パラレルワーカー同士など、同じ境遇やライフステージにある人とつながるアプローチだ。
越境の形態はさまざまであり、本書では12のバリエーションが紹介されている。異動、中途採用、複業人材・フリーランス登用、複業解禁、社内複業、クロスファンクションプロジェクト、プロジェクト型組織、「出島」、企業間留学・出向の「逆参勤交代」、海外研修、外部講座受講、社外プロジェクト・コミュニティ参画、ワーケーションの12種類である。それぞれの形態の特徴を理解し、組織の目標に応じた越境施策を選択するようにしたい。「複業」と「ワーケーション」については後ほど取り上げる。
複業・パラレルキャリアは、個人が組織の壁を越えてアウェイな環境で活躍する越境スタイルだ。複業はそれを行う個人のみならず、複業を受け入れる組織にも多くのメリットをもたらす。
まず、個人が得られるメリットの一例は「下請けマインドからの脱却+エンプロイアビリティの向上」だ。他者とのコラボレーションが求められるいま、下請けマインドでいては致命的である。複業をすれば主体的に働く経験を得られる。そして、自ら働きかけ、解決に向けた行動ができる人は、エンプロイアビリティ(雇われうる力)が高まり、市場価値の高い人材になれるだろう。
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