セレンディピティ 点をつなぐ力

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セレンディピティ 点をつなぐ力
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2022年02月17日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

道に迷ってしまったとき。約束の時間を間違えて時間が空いてしまったとき。マーケティング調査で仮説と異なる結果が出たとき。そんなとき、多くの人は「失敗してしまった」と感じるだろう。こうした決めつけによって、あなたはこれまで、チャンスの種を逃してきたかもしれない。“失敗”のかげには、新たな発見や出会いが隠れていたかもしれないのだ。

本書によると、「予想外の事態」は私たちの人生に大きな影響を与える。あなたも、たまたま手に取った本をきっかけに進路を変えたり、強引に誘われて出かけたイベントで素敵な人に出会ったりしたことがあるかもしれない。著者は、そうした偶然の出来事を引き寄せ、好ましい成果につなげる力、つまりセレンディピティを起こす力は誰にでも習得可能だという。

ただ、セレンディピティが注目を集めることは驚くほど少ない。誰もが「偶然ではなく、才能あふれるこの人だから成功したのだ」と思われたいし、人は理路整然としたストーリーを好むものだからだ。それでも、セレンディピティの価値に気づける本書を読めば、世界の見え方が変わるに違いない。

本書では、偶然の出来事が思いがけない結果をもたらしたエピソードやセレンディピティを起こしやすくするトレーニングが豊富に紹介されている。著者も認めているように、世界は決してフェアではない。だが、本書を通じて「セレンディピティ・マインドセット」を身につければ、点と点をつなげ、自らの手で運命を変えることができるかもしれない。

著者

クリスチャン・ブッシュ(Christian Busch)
ニューヨーク大学(NYU)とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で、パーパス・ドリブン・リーダーシップ、イノベーション、アントレプレナーシップを教える。LSEでイノベーション・アンド・コクリエーション・ラボの共同ディレクターとコースリーダーを務めたのち、NYUではセンター・フォー・グルーバル・アフェアーズ(CGA)のグローバル・エコノミー・プログラムのディレクターを務める。LSEにて博士号(Ph.D.)取得。
20カ国以上で活躍する若手イノベーターのコミュニティであるサンドボックス・ネットワーク、強い影響力を持つリーダーの集まりであるリーダーズ・オン・パーパスの共同創設者。
世界経済フォーラムのエクスパートフォーラムのメンバーであり、ロイヤル・ソサエティ・オブ・アートのフェローも務める。

本書の要点

  • 要点
    1
    セレンディピティは「予想外の事態での積極的な判断がもたらした、思いがけない幸運な結果」を意味する。気づいていないかもしれないが、セレンディピティは日常生活のなかにあふれている。
  • 要点
    2
    セレンディピティは予測できないが、ある出来事の隠れた価値に気づき、活用する能力(セレンディピティ・マインドセット)は伸ばすことができる。
  • 要点
    3
    「セレンディピティが起きてほしい」と期待しながらただ待つのではなく、積極的に種をまき、行動を起こそう。

要約

【必読ポイント!】 セレンディピティとは何か

「予想外の事態」が人生を変える

予想外の出来事や偶然の出会いが未来を変えることがある。例えばブドウ球菌の研究者であるアレクサンダー・フレミングは、ある日、研究室に放置されていたカビの生えたペトリ皿からペニシリンを発見した。放置されていたペトリ皿を捨てず、詳細に調べたことで、数百万人の命を救う薬が生まれたのだ。こうした「予想外の事態での積極的な判断がもたらした、思いがけない幸運な結果」のことをセレンディピティと呼ぶ。

セレンディピティは日常生活のなかにあふれている。著者がこれまでの恋人と出会ったのは、たいていコーヒーショップや空港だった。コーヒーをこぼしてしまったり、席を外す間パソコンを見ていてほしいと頼んだりしたことをきっかけに会話が始まったのだ。

あなたに恋人がいるとしたら、相手との出会いを振り返ってみよう。出会いが「たまたま」だったとしても、おそらくまったくの偶然ではないだろう。相手との相性の良さや共感できる部分、共通の価値観などに気づき、関係を築くために努力したのは、ほかでもないあなただ。それは単なる偶然ではなく、セレンディピティである。

セレンディピティの3つの特徴
JohnnyGreig/gettyimages

セレンディピティは、私たちの身に「起こる」ことではない。セレンディピティにはいくつかの特徴があり、その一つひとつは意識的に育むことのできるものだ。セレンディピティの力をより深く理解するために、セレンディピティの3つの特徴を見ていこう。

(1)ある人に予想外の出来事が起こる。これを「セレンディピティ・トリガー」と呼ぶ。

(2)その人がトリガーを別のことと結びつける。点と点を結びつけ、偶然のような出来事や出会いに価値があるかもしれないと気づく。これを「バイソシエーション」という。

(3)実現した価値は完全に予期せぬものである。

重要なのは、偶然の発見を理解し、複数の情報の間につながりを見つけて、それらをクリエイティブに結びつけていく能力を持った人の存在だ。セレンディピティ・トリガーに気づかなかったり、セレンディピティ・トリガーが何と結びつくのかわからなかったりすれば、セレンディピティの機会は失われる。

セレンディピティは偶然に起こるもので、予測するのは不可能だ。ただし、予想外の出来事の価値に気づき、活用する能力(セレンディピティ・マインドセット)は伸ばすことができる。

セレンディピティの妨げとなる4つのバイアス

セレンディピティの最大の障害は、バイアス(思考の偏り)だ。バイアスを完全に排除するのは難しいが、バイアスを自覚し、その影響を和らげて、別の考えを受け入れようと努力することはできる。セレンディピティの妨げとなる基本的なバイアスは、次の4つだ。

(1)予想外の要因の過小評価

私たちにはそれぞれが考える「ふつう」、つまり偏った視点があるため、「予想していたこと」ばかり目に入ってしまうものだ。だが過去を振り返ると、経歴からパートナーとの出会いまで、予想外の要因が人生のかなりの部分を形づくっていることに気づくだろう。予想外の出来事へのオープンな姿勢は、運を引き寄せ、セレンディピティを経験するカギとなる。

(2)多数派への同調による自己規制

群れの心理はセレンディピティを阻害する。多数派の意見を妄信するのではなく、常に疑問を抱こう。自分の企画や発見が組織の意向や常識に合わないことを恐れ、切り捨ててしまってはいけない。

(3)事後合理化

私たちは意見やアイデアを他人と共有する際、それが思いがけないところからもたらされたとは言いづらく、あたかも意図したストーリーであったかのように語ってしまうことがある。だがそうしてセレンディピティの痕跡を消し去ってしまうと、セレンディピティを再びつかむ機会が失われてしまう。

(4)機能的固定化

あるツールが特定の方法で使われているのを見慣れていると、それを別の方法で使うという発想は生まれにくい。しかしクリエイティビティが最も高まるのは、まったく新しいアプローチを活用したときだ。アクション映画のヒーローが、身近な小物を武器にして相手を倒すシーンを思い出してみよう。

セレンディピティを起こすために

枠組みを転換する
Mirel Kipioro/gettyimages

予想外の出来事に気づけるかどうかは、注意力、つまり「感度」にかかっている。

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要約公開日 2022.04.26
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