ブランドはいま、技術力や商品ラインナップだけではなく、消費者と向き合う姿勢や振る舞い、とりわけ「世の中を本気で変えていこう」という勇気が求められている。
アーティストのリアーナ・フェンティは、その名も「Fenty(フェンティ)」というコスメティックスのブランドを立ち上げた。これは、彼女が黒人の女性として「なぜ自分の肌の色に合うファンデーションが売られていないのか?」という疑問から企画したものだ。さまざまな肌の色に合う化粧品を提供しており、彼女のファンはもとより多くの人々から支持されている。
2021年、バイデン大統領の就任式に参列したミシェル・オバマ氏がフェンティのアイライナーを身につけていたことが、このブランドの意味を象徴している。
既存の化粧品メーカーであれば、さまざまな色のバリエーションを揃えるのは容易だ。しかし、そうした表面的な対応だけで、コアとなる思想がなければ消費者から共感を得られない。ブランドは「本気で未来への約束ができるか」という本気度が問われているのだ。
市場が成熟しモノやサービスが溢れて久しい。「まだ行き渡っていないもの、『みんなが欲しい何か』がある」というマスマーケティングの考え方自体が過去のものになってしまった。
一見、ニッチなニーズでしかないと思える「少数の人」のインサイトを深く掘り下げていく。すると、意外にも多くの人から共感され売れているモノやブランドがあることに気づく。このような局所的なヒットは、「マスニッチ」と呼ばれる。最初から「平均的なみんな」を想定する従来のマーケティングの発想からは、深い共感を集めるブランドを生み出すことは難しくなっている。これに対し、ニッチでも価値観がはっきりしているモノやコトは売れる。共感はあくまで一人のインサイトを掘り下げた先に生まれるのだ。
価値観やライフスタイルが多様化したいま、企業に問われているのはブランドの認知度といった「指標」ではない。社会や環境に対してどのような姿勢で取り組んでいるのかという「ファクト」と、それに基づいた「ブランド・プロミス」である。
3,400冊以上の要約が楽しめる