本書で「欲求段階説」を提唱したマズローは、「よい企業とは、どうあるべきか」を説いた。「自己実現を目指す人たち」が「よい企業」をつくり、「よい企業」が「自己実現を目指す人たち」を生むという好循環を、いかにつくるかがテーマだった。
マズローは欲求を大きく2つに分けている。すなわち、欠乏(Deficiency)を満たす「欠乏欲求」(D欲求)と、個々人の人間の存在(Being)そのものに関する「存在欲求」(B欲求)だ。欠乏欲求は、空腹などの「生理欲求」や危険を避ける「安全欲求」といった欠乏への不満足から起こる。
マズローは、存在欲求である自己実現を、「自分ができる最大限をすることで、自分自身らしくなっている状態」と表現した。人は誰しも「より高い価値を発揮したい」という潜在的な欲求をもち、そうした「自己実現を目指す人」を「よい人」と呼んだ。
「よい人」は「よい企業」をつくり、「よい企業」は「よい人」を生む。鶏と卵の関係にある。自己実現する人は、他人の喜びが自分の喜びとなる。組織も、「対立する考え方」から「シナジーを生む考え方」に進化することにより、個人と組織の対立は消え、チームの利益が自分の利益となる。
ほとんどのマネジメントの問題は、人の問題に行き着く。
本書は世界中のビジネススクールで参照されている組織行動学の定番の書であり、200万部超のベストセラーだ。組織にまつわる問題を網羅的かつ簡潔にまとめ上げている。
組織行動学は、個人・グループ・組織の3つのレベルにおいて、人の行動を解き明かす。組織は同じ目的を共有する集団だ。集団とは、「特定の目的を達成するために集まり、互いに影響を与え合う複数の人たちの集まり」である。
集団には、同調を強要する規範がある。集団の中で周囲と異なる意見を述べることに、人は強いプレッシャーを感じ、ためらう。そのほかにも、行動に影響を及ぼす集団の特徴として、凝集性の高さや規模による生産性の違いが挙げられている。
一方、組織文化は、メンバーが共通してもつモノの見方であり、社員の行動を決める台本だ。東日本大震災の発生時に帰宅困難者を受け入れた帝国ホテル、コスト節約を旨とするアマゾン――。こうした考え方の原型がつくられる創業時、起業のタイミングこそ、強い組織文化を築くチャンスだ。
現代は常に、継続的にダイナミックな変化が起こる。組織変革が日常的になると、「学習する組織」への進化が求められる。
3,400冊以上の要約が楽しめる