競争しない競争戦略 改訂版

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競争しない競争戦略 改訂版
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競争しない競争戦略 改訂版
出版社
日本経済新聞出版

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出版日
2021年10月12日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

社会が大きく変化する中、日本企業の横並び志向は依然として根強く残っている。多くの企業が成長分野に参入して新市場の競争が激しくなり、結果的に新市場もすぐにレッド・オーシャン化してしまう。

このような競争を避けて、自社独自のポジションを築くためにはどうすべきなのか。本書では「競争しない競争戦略」を、ニッチ戦略、不協和戦略、協調戦略の3つの基本戦略に分け、解説している。「競争しない競争戦略」の理論的背景、環境の激変に伴う戦略の変化だけでなく、「競争しない競争戦略」の具体的な事例が、90以上も盛り込まれている。例えばセブン銀行のような身近な事例から、大手企業が追随できない高い技術を持つマニー (医療用具)や根本特殊化学(夜光塗料)といったグローバルに活躍する事例まで、幅広く盛り込まれている。どの業界にいる読者にも、響く箇所があるだろう。

本書は初版から6年後に書かれた改訂版であり、事例の半分以上が差し替えまたはアップデートされている。DX、IoT 、シェアリングエコノミー、サブスクリプションなども反映され、読み応えたっぷりな一冊になっている。経営者や経営戦略を策定する立場にある方にぜひ読んでいただきたい。自社の活路を見出すヒントが得られるはずである。

著者

山田英夫(やまだ ひでお)
早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
1955年、東京都生まれ。1981年、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了後、三菱総合研究所入社。大企業のコンサルティングに従事。1989年、早稲田大学へ移籍、現在に至る。専門は競争戦略論、ビジネスモデル。博士(学術:早稲田大学)。アステラス製薬、NEC、ふくおかフィナンシャルグループ、サントリーホールディングスの社外監査役・社外取締役を歴任。
著書に、『逆転の競争戦略 第5版』(生産性出版、2020)『ビジネス・フレームワークの落とし穴』(光文社新書、2019)『成功企業に潜むビジネスモデルのルール』ダイヤモンド社、2017)『ビジネス版 悪魔の辞典』(日経プレミアシリーズ、2016)『経営戦略 第3版』(共著、有斐閣、2016)『競争しない競争戦略』(日本経済新聞出版、2015)『異業種に学ぶビジネスモデル』(日経ビジネス人文庫、2014)『ビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門』(共著、日経BP、2012)『なぜ、あの会社は儲かるのか?』(共著、日経ビジネス人文庫、2009)『デファクト・スタンダードの競争戦略 第2版』(白桃書房、2008)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「競争しない競争戦略」とは、やみくもに売上やシェアを増やすより、競争しない状態を生み出すことで利益率を高める戦略である。
  • 要点
    2
    競争しない競争戦略は、生物学から派生した「棲み分け」と「共生」の概念をベースにしている。前者の発想に立つのは、競合他社との直接競争を避け、棲み分けした特定市場に資源を集中する「ニッチ戦略」と、リーダー企業が同質化を仕掛けようとしたときに、リーダー企業の資産を負債に変えてしまう「不協和戦略」である。後者の発想に立つのは、より強い企業と共生し、攻撃されない状況を作る「協調戦略」である。

要約

「競争しないこと」で企業の利益率を高める

競争するメリットとデメリット

業界の中で競争が激化すると、価格競争が起きやすくなり、最終的に企業合併に進みやすい。これはすでに、医薬品卸やガソリンスタンド業界で起こっている。

本書で提示するのは、いかにして競争せず、自社の独自性を貫くかという戦略である。企業の利益率を高めるためには「競争しないこと」が必要となる。そこで3つの戦略「ニッチ戦略 」、「不協和(ジレンマ)戦略」、「協調戦略」を企業の事例とともに紹介する。

そもそも競争するメリットは何か。それは、各社の努力による「企業の能力向上」、競争が増えることで「市場の成長」、他社との競争によって学習を進める「組織の活性化」、さらに「多様化するニーズへの対応」、「価格の低下」などがある。

一方、競争のデメリットもある。1つ目は、競合他社中心の考え方によって顧客志向から競争志向になる点だ。2つ目は、かつての「0円携帯電話」に代表される、必要以上の価格下落である。その結果、日本企業は過去60年にわたり売上高営業利益率5%以下という結果を招いている。そして3つ目が、常に競合への対応に追われて起きる、組織の疲弊である。

競争には必ず相手がいる
Sitthiphong/gettyimages

競争には必ず相手がおり、一番脅威となるのが、経営資源の質・量ともに最大であるリーダー企業である。リーダーの戦略定石は4つ挙げられる。

1つ目は「周辺需要の拡大」だ。例えば、夜だけでなく朝も歯磨きすることで、歯磨き粉の消費量を倍増させるなど、市場のパイを拡大させる戦略である。

2つ目は「同質化政策」である。過去のトヨタやパナソニックのように、差別化戦略とったチャレンジャーのヒット商品を模倣して差別化効果をなくしてしまう戦略が挙げられる。

3つ目は「非価格対応」であり、下位企業の価格競争に安易に応じない戦略である。

4つ目は「最適シェアの維持」だ。シェアを取りすぎると独占禁止法などの問題によりトータルコストが高くなることがある。そこで最適なシェアを維持することで利益率を高くするというのだ。

こうした4つの戦略の中でリーダー企業が最も対抗しやすいのが、「同質化政策」である。

【必読ポイント!】 競争しない3つの戦略

「棲み分け」と「共生」

競争しない競争戦略は、「棲み分け」と「共生」の2つに大別できる。

1つ目の「棲み分け」とは、棲んでいる世界を異なるものにして共存を可能にすることである。棲み分けは、「ニッチ戦略」と「不協和(ジレンマ)戦略」とに分かれる。

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要約公開日 2022.02.10
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