業界の中で競争が激化すると、価格競争が起きやすくなり、最終的に企業合併に進みやすい。これはすでに、医薬品卸やガソリンスタンド業界で起こっている。
本書で提示するのは、いかにして競争せず、自社の独自性を貫くかという戦略である。企業の利益率を高めるためには「競争しないこと」が必要となる。そこで3つの戦略「ニッチ戦略 」、「不協和(ジレンマ)戦略」、「協調戦略」を企業の事例とともに紹介する。
そもそも競争するメリットは何か。それは、各社の努力による「企業の能力向上」、競争が増えることで「市場の成長」、他社との競争によって学習を進める「組織の活性化」、さらに「多様化するニーズへの対応」、「価格の低下」などがある。
一方、競争のデメリットもある。1つ目は、競合他社中心の考え方によって顧客志向から競争志向になる点だ。2つ目は、かつての「0円携帯電話」に代表される、必要以上の価格下落である。その結果、日本企業は過去60年にわたり売上高営業利益率5%以下という結果を招いている。そして3つ目が、常に競合への対応に追われて起きる、組織の疲弊である。
競争には必ず相手がおり、一番脅威となるのが、経営資源の質・量ともに最大であるリーダー企業である。リーダーの戦略定石は4つ挙げられる。
1つ目は「周辺需要の拡大」だ。例えば、夜だけでなく朝も歯磨きすることで、歯磨き粉の消費量を倍増させるなど、市場のパイを拡大させる戦略である。
2つ目は「同質化政策」である。過去のトヨタやパナソニックのように、差別化戦略とったチャレンジャーのヒット商品を模倣して差別化効果をなくしてしまう戦略が挙げられる。
3つ目は「非価格対応」であり、下位企業の価格競争に安易に応じない戦略である。
4つ目は「最適シェアの維持」だ。シェアを取りすぎると独占禁止法などの問題によりトータルコストが高くなることがある。そこで最適なシェアを維持することで利益率を高くするというのだ。
こうした4つの戦略の中でリーダー企業が最も対抗しやすいのが、「同質化政策」である。
競争しない競争戦略は、「棲み分け」と「共生」の2つに大別できる。
1つ目の「棲み分け」とは、棲んでいる世界を異なるものにして共存を可能にすることである。棲み分けは、「ニッチ戦略」と「不協和(ジレンマ)戦略」とに分かれる。
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