著者のクライアントであるRさんは、職場の人間関係で苦しんでおり、自己肯定感が非常に低かった。周囲の人に認めてもらおうと、一生懸命に頑張り、成果をアピールしてきた。しかし努力すればするほど孤立してしまい、「認めて、認めて、みんな何で私を評価してくれないの?」という心情だったという。
よくよく話を聞いてみると、Rさんは「優秀でないと人は受け容れてくれない」と思い込んでしまっていた。そこで著者がアドバイスしたのは「Rさんが優秀なことはみんな分かっている。『認めて、認めて』とアピールするRさんではなく、ありのままのRさんとつながりを持ちたいと思っているのではないか」ということだ。その結果Rさんは、「認めて!」とアピールするのではなく、他の人たちのために動くことが増えていき、周りの人と本当のつながりを築けるようになった。
自己肯定感は「自分をどれだけ受け容れているか」の指標だ。自分を受け容れることを自己受容という。今の状態が良くても悪くても、できてもできなくても、自分という存在にOKを出すのが自己受容だ。OKとは、「仮に今はNo Goodな状態だとしても、それはあくまで状態であって、私の本質ではない。だから状態はNo Goodだけど、自分という存在にはOKを出す」ということである。
自己肯定感が高い人の例として、バカボンのパパが挙げられる。バカボンのパパの口癖は「これでいいのだ」だ。大失敗しても問題が発生しても、最後は「これでいいのだ」と締めくくり、自分を否定しない。少し極端だが、バカボンのパパこそ自己肯定感の高い人である。
なぜ人は自己肯定感が低くなってしまうのだろうか。それは「~でなければいけない」という思い込みが自己否定を引き起こして、自己肯定感を下げてしまうからである。
思い込みは多くの場合、事実とは異なる。それでも人は、思い込みに振り回され続けてしまうのだ。
冒頭で紹介したRさんは、「優秀でなければ、会社の人とつながりを持てない」と思い込んでいた。しかしこれは事実ではない。誰しも優秀な人と知り合いになりたいという下心はあるだろうが、本当のつながりにおいて、優秀さは一番大切な要素ではないはずだ。そのことに気づけたからこそ、Rさんは変わることができた。
思い込みは育った家庭や地域、学校や職場の環境などに影響されて、あなたの潜在意識の深いところに根付く。そのような環境下でくり返し言われることや、“常識”として語られ続けることが、あなたの存在意識の中に浸透し、やがて強い決めつけとなる。
外からみると、それは“思い込み”や“決めつけ”に過ぎない。
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