ここ数年で「読書の人」と認知される機会が増え、読書についてよく質問される著者は思うことがある。「読書法は究極的にはケースバイケース」だということだ。本の読み方は読書の目的や人の特性によるし、読むべき本もその人の前提知識や関心ごとに依存する。
それでもなんとか、タメになる読書法を提示するために、濱口秀司さんの『SHIFT:イノベーションの作法』で紹介されている考え方を借りてみよう。この本の中で、濱口さんは、「コンポーネントをランダムに見せる」「全体像を見せない」が、教育プログラムのあるべき姿だと語っている。教える側がわかりやすく教えるほど、受け手は考えなくなる。この状況を打破するには、教育効果の最も高い「全体像を考える」行為を、受け手から奪わないようにすることが大切なのだ。
これを読書に置き換えてみよう。コンポーネントを示しつつ、あえて全体像を「余白」として残すことで、「ケースバイケース」の読書法を生み出せるのではないか。それに必要なのは、読者の「考える力」だ。
油断していると、私たちは本の内容を無批判に受け入れてしまう。それが「他人の頭で考える」状態であるとすれば、この本が目指すのは「懐疑」と「問い」を持って頭を駆動させる、「自分の頭で考える」読書だ。この本を読むことを通じて、自分だけのオリジナルな本をつくっていこう。
人類が今まで、既知の世界を生きていたことはない。では、今がことさらに「先が読めない時代」だといわれているのはなぜだろうか。そのカギは「グローバリゼーション」と「自由化」にある。かつては区切られた集団の中だけでゆっくりとした変化が起きていたが、ある国や地域のできごとが世界中に影響を及ぼすようになった今、かつてないほどの短い期間で大きな変化が起こるようになった。
このような「予測不可能な世界」では、過去の経験を参照するだけでは答えが出せない。しかし、だからといって、変化のたびに蓄積した経験がゼロになるわけではない。過去に培ったものの中から大事なものを抽出して本質を見出し、未知の世界に活かす、「過去の抽象化力」を身につければよいのだ。
たとえば、紙の資料をまとめるためにホチキスを打つ仕事を担当している人がいたとする。
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