福沢諭吉の『学問のすゝめ』には、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといへり」という一節がある。これは人の平等を説いたものであるように見えるが、諭吉は「賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりて出来るものなり」とも書いている。「生まれによって人の差はないけれど、学びで人の差はできる」ということだ。
激動の明治時代の幕開けと同様、2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大は人びとの生活様式を大きく変化させた。情報に振り回されず、次に起こることを予測して自分で判断していくためには、「学び」が重要となる。そして学ぶ楽しさを得ると同時に、「学び」を「成果」や「お金」に変えていく方法として、本書では31のポイントを挙げている。要約ではそのうちのいくつかを紹介する。
そもそも「なぜ学ぶのか」、きちんと理由を考えておきたい。
ただ単にこなすだけの仕事より、その価値を理解できている仕事の方が、モチベーションがわくものだ。「学び」についても同様に、何のためにやるのかが明確でないと続かない。
ただし、それが「収入をあげるため」だとしても、稼ぐこと自体は手段の1つでしかない。得られた収入を何に使うか、そのお金で何を体験できるのかが、学びの目的となるのだ。
人には次の5つの欲求がある。「褒められたい」「認められたい」「成長したい」「自立したい」「人の役に立ちたい」というものだ。これらが満たされると人は意欲的になれる。これは、あなたにとっての「この理由なら頑張れる」という原動力になる。「苦労を乗り越えたとき」、「嬉しさが込み上げたとき」など、人生のターニングポイントとなった過去の経験には、「がんばれる理由」が隠れている。
お金を稼ぎたいならば、お金について学ぶ必要がある。
「可能な限り、安くていいものを提供したい」という考えは一見するとよさそうだが、「自己犠牲のうえで誰かを幸せにしたところで、誰も喜ばない」。薄利多売をして赤字になり、撤退を余儀なくされるのではなく、いいサービスを長く提供することが企業の責任だ、というようなことを輸入ビジネスのプロフェッショナルである大須賀祐さんも述べている。
資本主義社会において、稼ぐことは悪いことではない。ビジネスを一時的な収入で終わらせないためには、ベースとなるお金の知識を持つ必要がある。「いまの収入と支出のバランス」「将来、必要なお金はどのくらいか」「リスクが発生したときに、どの程度お金があれば回避できるのか」「どんな状態をつくれば、金融的なリスクを発生させずに生活できるのか」という4点くらいは、ふまえておくべきだろう。
これからの時代は「自己管理能力」と「考える力」が以前より重要視される。
新型コロナウイルスの感染拡大以降、テレワークが爆発的に広まった。国土交通省の発表したデータによると、「2020年度のテレワーク実施者は前年度の9・8%から19・7%へ倍増」している。この傾向は、アフターコロナにおいても続くだろうと著者は考えている。「人間は便利なほうに流れる生き物だから」だ。テレワークならばどこにいても仕事ができる上に、通勤ラッシュにも巻き込まれない。オンラインセミナーでは会場を予約する必要もないし、海外から参加することもできる。こうした便利さを捨ててまで、元に戻そうとは考えないだろう。
ただし、テレワークでは自分で自分の時間、生活リズム、仕事の進捗を管理できなくてはいけない。そういう人でなければ、生き残れない世の中に向かっている。これは個人事業主や起業家の働き方に近い。「すべての人が経営者的なマインドを持って、自己管理能力を高め、自分で考えて仕事をしていく」ことが重要になる。
自分を成長させるには「夢やビジョンを持つ」ことが必要である。「何ごともゴールが先にあって、手段はあとから選ぶもの」だ。旅行する際には、まず行き先を決める。人生を航海ととらえるなら、行き先がなければ遭難してしまう。
しかし、多くの人はビジョンを持つことに対してハードルを感じてしまう。「自分に自信がない」、あるいは「約束という概念が高すぎる」からである。
3,400冊以上の要約が楽しめる