初めにIT関連の中小・ベンチャー企業6社に焦点を当て、成功する企業の秘訣を紐解いていく。その1つがマサチューセッツ州に本社を置く「ハブスポット」。受け手に押し付ける印象を与えずに売込む手法である「インバウンドマーケティング」の統合ソフトを開発し、全世界でビジネス展開する急成長中の会社である。「顧客のために解決する」という強いミッションを社員全員で共有するだけでなく、社内の透明度が高くあらゆる社内情報にアクセス出来る環境を整えており、社員一人一人が経営者と同じ立場で議論できることを企業文化としている。その結果、各社員が現場で瞬時に判断しスピードを持ってゴールに到達することが可能となり、全社員の実績が会社の急成長に大きく寄与している様子が伺える。
また、欧州各国でデジタルメディアのマーケティングを行う企業の集合体「ボックスネットワーク」。その1つで、ミラノとローマを拠点とし約80名のスタッフで運営している「ハガクレ」のCEOであるマッサロッティ氏は、企業成長の3要素としてコンピタンス、イノベーション、チームを挙げている。
また、インターネットという世界はボーダーレスだからこそ異文化に対する理解が必要だと言及している。異文化を理解していないと的外れな戦略を実行してしまう恐れはあるが、この文化差による数多くの経験から得たノウハウがビジネスにつながるのではないかと考える。
更に、イタリアで成長を続けるモノ作り企業4社にも焦点を当てる。いずれもニッチ産業に活路を見出し大きく成長した企業だ。その一つ、果物のカッティング機械メーカーであるABLの創業者令嬢で役員のアスカリ氏は、海外戦略の質問に対し、地元の小さな銀行と協力しながら国際決済を行い海外へ輸出業を拡大したことを明かした。事実、この数年マネーロンダリング対策により銀行の各種手続きは煩雑化し、国際取引に新規参入する地方の中小・ベンチャー企業にとっては口座開設すらハードルが高くなっている。ABLのように、海外戦略の際には国際取引経験のある同規模の他社や地元の金融機関などと連携していく姿勢が必要だ。
「メイド・イン・イタリー」というブランドの中核を担ったのは中小製造業であるように、イタリアでは中小・ベンチャー企業が産業を牽引してきた力は大きい。一方で、海外進出に際し、ステレオタイプや偏見をどう克服していくか、安全基準への適合をどう実施していくかといった悩みは、国を問わず中小・ベンチャー企業にとって共通の課題だ。その具体的な解決策はイタリア製造業の企業にヒントがあると考えインタビューを行った。
これからの時代を企業が生き抜くための鍵である「ビジョン」、「人材」、「コンピタンス」は多くの企業家が挙げたキーワードであり、企業の成長には欠かせない基本要素である。しかしここでは、敢えて少数意見であった「デザイン」「ルールメイキング」「オープン」「ローカル」について深掘りし、新たなビジネスヒントを得ていきたい。
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