創造は「生き残るための手段」や「才能ある一部の人のもの」ではない。創造は、日常をより楽しくし、人生をより自分らしいものにしてくれる。創造力は希望をつくる力だ。
創造する力を身につけるためには、まねをすること、つまり模倣が重要だ。何かを観察して模倣する行為は、創造脳を動かす第一歩になる。
もうひとつ重要なのは、創造を仰々しいものととらえないことだ。創造性研究の分野では、創造性をBig‐C(大文字の創造性)とMini‐c(小文字の創造性)の2つに分ける。Big‐Cは、社会に大きな影響を与え、高く評価される、スティーブ・ジョブズやパブロ・ピカソなどの創造性をいう。一方Mini‐cは、絵を描く、動画を撮る、新しいレシピを試すなど、誰もが日常的にやっている創意工夫を指す。
Big‐Cの前には無数の名もなきMini‐cがある。現代は、アプリを使って、誰もが気軽にMini‐cを発揮できる時代だ。自分自身のMini‐cに目を向けてみよう。
本書では、創造の本質が、模倣・想像・創造の3つの段階に分けて紹介される。第1段階の「模倣」で大切なのは、小さな違いまで観察し、感性のセンサーを働かせることだ。感性のセンサーが働くようになると、自分のなかに「美しい」「いいな」などといった感覚のデータベースがつくられていく。
まずは、目の前のりんごを1分間、目をそらさずじっくり観察してみよう。デッサンするつもりで観てみると、ものの見方の解像度が上がり、「こっちのりんごはつやがあるな」「この曲線のほうがきれいだな」などと、対象の細部まで感じられるようになる。
著者がこれまで出会ってきたデザイナーやクリエイターは、決まって手書きの習慣を大事にしていた。ペンと紙を使って手を動かすのは、「考えたものを描き出す」のではなく「描くことで考える」行為だからだ。
基礎トレーニングとして、一日ひとつ、好きなイラストをボールペンで写してみよう。ボールペンを使い切るまでこのトレーニングを続ける。
手を動かしていると、細部が気になったり、イラストの個性に気づいたりと、手で考える感覚を実感できるはずだ。まずは、自分が心惹かれるものを「まね」て、良い創作物の型を身体で覚えることから始めよう。「まねる」のコツがつかめると、自分の好みもはっきりしてくるはずだ。
センスとは、良いものを感じた総量だ。センス磨きは、「いまどんな心地なのか?」を常に自分に問いかけることからスタートする。自分の感覚に目を向ける習慣がつくと、センスの経験値が蓄積し始めるのだ。
センスを磨くためには、上質な体験に投資することが大切だ。著者の場合は、
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