未来実現マーケティング

人生と社会の変革を加速する35の技術
未読
未来実現マーケティング
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人生と社会の変革を加速する35の技術
未読
未来実現マーケティング
出版社
出版日
2022年05月27日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

企業が自社の利益のみを追えばよかったのは、もう過去のことだ。現代においては、環境保全や多様性の実現など、社会的な貢献も強く求められるようになった。SDGsはその最たるもので、世界全体で目指す「大きな目標」として掲げられている。各企業は「地球にやさしい」製品を開発したり、働きやすい環境づくりに取り組んだりしていることだろう。しかし、そこには矛盾や葛藤が生じることも少なくない。理想的には「そうするべき」でも、コストに見合わない、ビジネスに困難が生じるなど、双方を両立させることは難しいものだ。

本書は、そのような課題を「マーケティング」によって解決しようとする一冊だ。マーケティングというと、広告や販促のための調査手法を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。しかし著者によると、それは「表層的な理解」であり、その本質は「必要な価値を、必要な人に届け、必要な変化を起こす仕組みづくり」であるという。そして、より良い未来を実現するためにはマーケティング的なアプローチが欠かせないと語っている。

本書ではSDGsの17の目標を取り上げて、一つひとつ、マーケティング思考を使った解決法を示していく。全体で35の手法が紹介されており、目から鱗の名案も多いだろう。難題がスルスルと解けていく快感を味わえるはずだ。

マーケッターはもちろん、そうでない人にも、まずは本書を一読してほしい。あなた自身や自社の悩みを解決に導くヒントが見つかるに違いない。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

神田昌典(かんだ まさのり)
経営・マーケティングコンサルタント、作家
アルマ・クリエイション株式会社代表取締役
NPО法人学修デザイナー協会・理事
上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士(MA)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得。大学3年次に外交官試験合格、4年次より外務省経済局に勤務。その後、米国家電メーカー日本代表を経て経営コンサルタントとして独立。多数の成功企業やベストセラー作家を育成し、総合ビジネス誌では「日本のトップマーケター」に選出。2012年、大手ネット書店の年間ビジネス書売上ランキング第1位。18年、マーケティング分野で歴史的権威があるDMA国際ECHO賞の国際審査員に抜擢。2019年・2020年、「社長の成績表®︎」(古田土会計主催)にて、2,400社超中、2年連続No.1に。ビジネス分野のみならず、教育界でも精力的な活動を行っている。
主な著書に『2022――これから10年、活躍できる人の条件』(PHPビジネス新書)、『インパクトカンパニー』(PHP研究所)、『ストーリー思考』(ダイヤモンド社)、『成功者の告白』(講談社)、『非常識な成功法則』(フォレスト出版)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    マーケティングは「必要な価値を、必要な人に届け、必要な変化を起こす仕組みづくり」であり、人生と社会を変えられる現実的なツールだ。
  • 要点
    2
    変革を潰そうとする圧力から逃れるには、理解してくれる少人数と集うのが有効だ。少ないメンバーで素早く行動を起こすうちに、賛同する人が増え、やがて大きな変革につながっていく。
  • 要点
    3
    SDGsの目標を達成するには、まず「個人のペイン解消」を目指すべきである。

要約

マーケティングが人生と社会を変える

変革加速ツールとしてのマーケティング

マーケティングは、人生と社会を変えられる現実的なツールである。その本質は「必要な価値を、必要な人に届け、必要な変化を起こす仕組みづくり」だ。

たとえば、100人の組織で変革を起こしたいときはどうすべきか。この場合、大多数の80人は、変化の必要性を頭で理解しながらも、変化の大変さを想像して実行に移せない。リーダーが変革を説くほど反発するだろう。

ここで、真にマーケティング思考を持つリーダーなら、全員ではなく、自ら進んで変化に協力する数人とだけつながる。このメンバーだけで素早く行動をし始めると、協力者が次第に増えていくだろう。マーケティングの真髄は、このように、小さな波を大きくしていきながら個人と社会の変化をリードする仕組みづくりである。

本書では、世界共通の目標となったSDGsに焦点を当て、「変化加速技術としてのマーケティング」を解説していく。本要約では17の目標とその解決策のうち、3つのエッセンスを紹介する。

SDGs1:貧困をなくそう

常識を覆す「逆転ポジショニング」
SB/gettyimages

2007年に著者が始めた「世界を良くするビジネスプロジェクト(Business for the Better World)」は、常識はずれのプロジェクトだった。月収1万円以下で働く障がい者の共同作業所を巡るバスツアーを企画し、100万円の参加費を請求したのである。

もともと、この見学ツアーは無料だった。それが当たり前だったし、障がい者への理解を深めてもらい、寄付などの支援をしてほしいという期待が含まれていたのだろう。

しかし、これでは「与えるものvs.与えられるもの」という主従関係が固定化してしまう。そこで著者は、このツアーを「新規事業開発のための研修プログラム」にすることを思いついた。共同作業所ではどんな仕事をしているのか。障がいとはどんなもので、得意なことや苦手なことは何か。どう教えると技術を習得しやすいか――。こうしたことを、企業の幹部社員たちが障がい者やスタッフから教えてもらうプログラムである。

そうすれば、企業幹部は「施す側」から「学ぶ側」に、障がい者は「施される側」から「教える側」に変わり、強者と弱者の関係性が逆転する。まさに、世界を変える発想だといえた。

理解しあえる少人数と集う

ところが、プログラムにはさっぱり人が集まらず、著者のもとには「障がい者を食いものにするのか」と批判が殺到した。

価値ある新しいことをしようとすると、必ず潰そうとする圧力がかかる。この圧力から逃れる方法は、理解しない人を理解させるのではなく、理解しあえる少人数と集うことだ。実際、著者がほんの数人の企業幹部に事情を説明したところ、共感する仲間が徐々に集まった。

このプログラムのポイントは「大胆な価格をつけたこと」にある。0円の提案には「タダ」を求める人たちが集まってくる一方で、100万円の提案にはお金以上の何かを求める人たちが集まる。あえて高い価格をつけたから、ハイクラスの人たちを集めることができたのだ。

【必読ポイント!】 SDGs2: 飢餓をゼロに

寄付金募集は赤字事業
hikari morikiyo/gettyimages

あなたは、「たった100円で救える命がある」などと謳った、寄付を募るダイレクトメールを受け取ったことはないだろうか。実は、寄付金募集はマーケティングの中で最も難易度が高く、プロの技術がふんだんに使われている分野だ。

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要約公開日 2022.06.27
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