かつて営業の仕事は、自社の商品・サービスの機能や性能に関する情報を顧客に提供することが中心だった。このような営業を「プロダクト営業」と呼ぶ。
1980年代になると、商品やサービスを用いた課題解決を提案する「ソリューション営業」が主流となっていった。インターネットが普及したことで、顧客はウェブ上で簡単に情報を得られるようになったからだ。
だが現在の営業の世界では、ソリューション営業も通用しなくなりつつある。どの会社も「御社の課題はなんですか?」と問い掛けるため、差別化につながらないからだ。また、顧客が自社の課題を把握できていない場合は、いくら問い掛けても答えは出てこない。これからの時代は、「ソリューション営業」からさらに一歩踏み込んだ、新しい営業スタイルへと移行する必要がある。
顧客は「願望の実現」のために商品・サービスを買う。これからの時代に求められる営業とは、顧客の願望を実現できる営業だ。そのような営業になるには、顧客が真に望む「理想」と「課題」を見つけ出し、自社の商品・サービスに関連させて伝えることが必要となる。本書ではこのような手法を「ストーリー営業」と呼ぶ。
ストーリー営業は「理想→課題→価値→方法」の4ステップに分解できる。これを見事に表現した例として、転職サービス「ビズリーチ」のテレビCMがある。
社長「どうせまぁ、大した候補はいないんだろう」(課題)
社長「これはすごい経歴だ。即戦力じゃないか。こっちはライバル会社。これも、これも、これも……。いったいどうしたんだ」(理想)
社長「おい、君、いったいどうしたんだ?」
部下「ビズリーチ!」
ナレーション「中途採用でも優秀な人材に出会えます」(価値)
ナレーション「即戦力採用ならビズリーチ」(方法)
あなたは、自分の営業する商品・サービスの「理想→課題→価値→方法」を明確に伝えられるだろうか。もしできないなら、30秒のテレビCMの絵コンテを自分で描いてみるといいだろう。
営業は足で稼ぐ仕事。顧客先に足しげく通って緊密な人間関係をつくることが大切だ――。そんな印象を持っている人も少なくないはずだ。
もちろん顧客との接触は必要だが、「近くまで来たので挨拶にうかがいます」というやり方は既に時代遅れである。用事もないのに顧客の時間を奪うのは逆効果だ。
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