アンドリュー・スコット(Andrew J. Scott)
ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授、スタンフォード大学ロンジェビティ(長寿)センター・コンサルティング・スカラー。ハーバード大学とオックスフォード大学にも籍を置いていた。彼の研究や著作、教育は複数の賞を受賞しており、私たちの世界を再構築するような深層変化と、個人や社会のさらなる繁栄にとって必要な行動について、世界に向けて情報を発信している。さまざまな企業や政府機関の役員、顧問も務める。ロンジェビティ・フォーラム共同設立者であり、英国予算責任局のアドバイザリーボードと英国内閣府の栄誉委員会のメンバーも務める。邦訳された著書に『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(リンダ・グラットンとノ共著)がある。
リンダ・グラットン(Lynda Gratton)
ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授。2015年に同校の卓越教育賞(Excellence in Teaching Award)を受賞。彼女の担当する講座「フューチャー・オブ・ワーク」は高い評価を得ている。世界経済フォーラムの「新しい教育と仕事のアジェンダに関する評議会」の責任者を務めており、同フォーラムのダボス会議にも2013年から参加している。世界で最も権威ある経営思想家ランキングであるThinkers50では、世界のビジネス思想家トップ15にランクインしており、2018年には安倍晋三元首相から「人生100年時代構想会議」のメンバーに任命された。彼女の著作は20を超える言語に翻訳されており、『ワーク・シフト』や、アンドリュー・スコットとの共著『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』は日本でベストセラーとなった。
技術的発明と社会的発明のギャップ
テクノロジーと人間の労働の代替
人類はこれまで技術的発明の才を存分に発揮し、驚異的な進化の歴史をたどってきた。さまざまなイノベーションにより生活水準は向上し、平均寿命が大きく伸びた。その恩恵は同時に経済と社会のあり方を様変わりさせ、私たちはいま、まったく新しいタイプの創意工夫、つまり「社会的発明」の必要性に迫られている。
AIとロボット工学の分野では、コンピュータの4つの法則(ムーアの法則、ギルダーの法則、メトカーフの法則、ヴァリアンの法則)が相互に影響し合い、指数関数的な技術的進歩を遂げてきた。自動運転車は普及するときが近づきつつある。また、製造現場のロボット導入はいっそう進むだろう。人間が生産ラインに立つと人間のスピードがボトルネックになるからだ。
人間が機械に勝てる領域を目指す
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近年、機械学習(ML)により飛躍的進歩を遂げたAIは、その触手を人間の守備範囲ともいえる認知プロセスの領域にまで伸ばしはじめた。グーグル傘下のAI企業ディープマインドは、「アルファ・ゴ(Alpha Go)」を開発した。そしてこのプログラムに、囲碁の対局に勝つことを追求するよう指示した。すると、プログラムみずから目標に向かって判断して動き、囲碁の世界タイトル保持者に勝利を収めたのだ。
テクノロジーの進化はそれを活用する人々の仕事のあり方を変質させる。人間の労働との代替リスクはレジ係やトラック運転手のほか、弁護士や会計士などの専門職にも及ぶ。私たち人間が機械に勝てる分野はあるのだろうか。
要約公開日 2022.07.17
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