ベリングキャットの表紙

ベリングキャット

デジタルハンター、国家の噓を暴く


本書の要点

  • オープンソースを分析するブログから始まったベリングキャットは、2011年のアラブの春や2014年のマレーシア航空機撃墜事件の調査をきっかけに注目されるようになった。

  • ベリングキャットのプラットフォームのモットーは、「特定し、検証し、拡散する」ことだ。

  • ベリングキャットは、真実を次々と暴き出し、元スパイ暗殺未遂では実行犯をあぶりだした。また、虚偽の情報が拡散されるのを防ぐ役割も果たす。

1 / 4

【必読ポイント!】 ベリングキャットの誕生

デジタル時代の報道

2011年の「アラブの春」は、デジタル時代の報道における情報が真実かどうかを検証する機運を高めた。当時の著者は、むさぼるようにインターネットで最新情報をあさっていた。ニュース記事に収まらない、外国特派員のツイートやレポート、ユーチューブの動画、フェイスブックの投稿などを見つけ出しては、ネット記事のコメント欄に次々と投稿した。曖昧な情報であふれるインターネットの世界で、著者が提供する信憑性の高い情報は、想像以上に重宝がられた。反政府側が支配したと主張する兵士の自撮り画像を、グーグル・マップを使った「ジオロケーション法」で分析、グーグル・アースも駆使して場所を特定し、公開したこともあった。歴史はもはや勝者のみが記すものではない。敗者もやじ馬も、近所の住民も、みんなスマートフォンを持っているのだから。

ブログからベリングキャットへ

Christopher Freeman/gettyimages

2011年、リビアのカダフィの死後、アラブの春を追っていたニュース中毒者たちが注目したのがシリアだ。アサド政権が市民の逮捕や殺害を続けていた。危険を冒してシリア入りするジャーナリストは皆無に等しかったが、インターネットには大量の情報があふれていた。著者は、ブログ「ブラウン・モーゼス」を開設し、フリーランスの通信員とも協力しながら、情報を拡散していた。目を覆いたくなるような虐殺のライブ動画と向き合い、事実の究明に力を尽くした。情報を発信し続ける中で心がけていたのは、冷静で分析的な態度を保つことだ。どちらかに肩入れすることなく、情報を発信して記録を残す作業に努めた。動画を片っ端から当たっていく中で注目するようになったのが、武器である。武器を扱った経験はなかったが、ネットで検索して自ら解説するようになった。こうして反政府軍が創意工夫で武器を自作していることや、政府軍がロシア製のクラスター爆弾を配備している証拠を発見した。化学攻撃を政府軍がおこなった証拠も掴んだ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3544/4374文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2022.07.23
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

贈与論
贈与論
マルセル・モース江川純一(訳)吉田禎吾(訳)
自己信頼[新訳]
自己信頼[新訳]
伊東奈美子(訳)ラルフ・ウォルドー・エマソン
OPEN
OPEN
山形浩生(訳)森本正史(訳)ヨハン・ノルベリ
存在と無
存在と無
ジャン=ポール・サルトル松浪信三郎(訳)
創造力を民主化する
創造力を民主化する
永井翔吾
ノイズに振り回されない情報活用力
ノイズに振り回されない情報活用力
鈴木進介
ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング
ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング
木下勝寿
新時代の営業「変わること」「変わらないこと」を1冊にまとめてみた
新時代の営業「変わること」「変わらないこと」を1冊にまとめてみた
横山信弘

同じカテゴリーの要約

経営者のための正しい多角化論
経営者のための正しい多角化論
松岡真宏
サピエンス全史(上)
サピエンス全史(上)
ユヴァル・ノア・ハラリ柴田裕之(訳)
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
リンダ・グラットンアンドリュー・スコット池村千秋(訳)
無料
グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか
グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか
河原千賀
FACTFULNESS
FACTFULNESS
ハンス・ロスリングオーラ・ロスリングアンナ・ロスリング・ロンランド上杉周作(訳)関美和(訳)
無料
デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか
デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか
針貝有佳
サピエンス全史(下)
サピエンス全史(下)
ユヴァル・ノア・ハラリ柴田裕之(訳)
となりの陰謀論
となりの陰謀論
烏谷昌幸
2050年の世界
2050年の世界
ヘイミシュ・マクレイ遠藤真美(訳)