環境の変化が激しい現代、企業力の格差が広がっている。原因は社員のモチベーションの差にあることが多い。
多くの企業はモチベーションを高めることに意識が向きがちだ。それはもちろん大事な取り組みだが、無意識のうちに職場でモチベーションを下げるようなことが日常的に行われているとしたら、取り組みの意味はなくなってしまう。まずはモチベーションを下げる要因=「やってはいけないこと」をしないようにすることのほうが重要だ。どんなときに社員のやる気が下がるかを知り、改善策を実行すれば、職場の雰囲気はあきらかに変わる。
本書は、多くの会社の経営や組織風土の改革を行なってきた著者が、実践家ならではの知恵とノウハウをまとめた一冊だ。「やる気」は個人の問題ではなく、職場の問題だ。上司や周囲との関わり、「人の気持ち」を理解しない対応や会社の制度・処遇などの影響でやる気を失うケースは少なくない。周囲との関係で下がったやる気は職場全体の課題と受け止めて解決しない限り、やる気が下がる社員は出続ける。やる気を下げる要因を取り除けば、勝手にやる気は上がっていく。
社員のモチベーションを高めることは、生産性を高め、利益を上げるだけでなく、企業文化の創出につながる。企業文化には、違うタイプの人も同じ考えや行動に染める力と、似たタイプの人を引き寄せる力がある。良くも悪くも、会社には企業文化にふさわしい人たちが集まり、残っていく。
モチベーションの高い集団は「やる気に満ちた人」たちを引きつける。一方、モチベーションの低い集団は「やる気に満ちた人」を排除する。やってもやらなくても評価が変わらない環境では、やる気のある優秀な人ほど虚しさを感じて辞めてしまう。モチベーションの高い前向きな人を採用しても、辞めてしまうか、やる気のない人たちのカラーに染まってしまうかだ。この繰り返しで、会社にいる人たちは言われたことをこなすだけの受け身の集団になる。
こうして、「やる気のある集団」と「やる気のない集団」の二極化が進んでいく。もしも自分の会社が負のスパイラルに陥っているなら、一刻も早く断ち切らなければならない。モチベーションに対する取り組みは、「企業力」へと直結していく。
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