近年、多くの組織が病んでいる。社員の不調、生産性・モチベーションの低下、職場の雰囲気の悪さ、採用の苦戦、離職……そうした組織の病の原因は、「マイナス感情」、つまり不満や不公平感の蓄積にある。マイナス感情はプラス感情よりも強烈で、長期にわたってさまざまな影響を及ぼす。
マイナス感情は、個人レベルで蓄積するだけでなく、組織全体にも蓄積していく。インフルエンザウイルスが感染し、発症し、他の人に伝染していくのと同様、マイナス感情が生まれると、離職やメンタル不調などの症状が出て、周りのメンバーにも影響していく。
社員のマイナス感情の発生対象は、「心身コンディション」「働きやすさ」「働きがい」の3つだ。著者はこれらを合わせて「個人活性」と呼ぶ。個人活性は、人が活き活きと働けるかどうかを決める重要な要素だ。
「心身コンディション」と「働きやすさ」と「働きがい」は、ピラミッドのように積み重なっている。心身コンディションが土台となっており、これがグラつくと、働きやすさと働きがいも崩れる。
マイナス感情が蓄積していくパターンとして、本書では6つのケーススタディーが紹介されている。そのうちの一つが、業務負荷が急増して疲労が溜まり、精神的な限界を迎えるケースだ。
業務負荷が増えていくと、疲労が溜まって「心身コンディション」が悪化する。そのような状況が続くと、「どうして私たちだけ」と不公平感が出たり、人間関係がギスギスしたりと、社内の雰囲気が悪くなり、徐々に「働きづらさ」が悪化する。
すると今度は「働きがい」の低下が起こる。仕事に対して後ろ向きになっていき、メンタルダウンや離職が引き起こされるのだ。
対策としては、業務量を削減するのが一番だ。難しければ、心身コンディションを保つ方法を模索しよう。会社側としては、疲労が溜まっている社員を早期発見し、「心身コンディション」の悪化を食い止めることを最優先にしたい。管理職による現場での声掛けや、過重労働時の心身健康を確認する問診票の作成、産業医面談の実施などが挙げられる。同時に、目先の「働きづらさ」を解消するために、業務管理改善のための管理職教育や、業務の偏りで生じる不公平感をなくすなどといった施策が考えられる。
マイナス感情が蓄積していくと、最終的には離職が発生することになる。離職には、会社都合のもの(解雇など)と個人都合のもの(家族の転勤や出産育児など)を除けば、次の3つのタイプがある。
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