あらゆるステークホルダーの中にLGBTQ(性的少数者・セクシュアルマイノリティ)が存在することが明らかになるにつれ、全ての企業にとってLGBTQを意識した経営の重要性が高まっている。とりわけLGBTQの従業員への対応は、優秀な人材の確保、法的リスク回避の観点から重要な経営課題の一つだ。多数の企業が何らかの取り組みを実施済み、検討中であり、取り組みを対外的に表明する「LGBTフレンドリー企業」も増えている。「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」では性的指向や性自認に関するハラスメントも事業主に防止対策が義務付けられ、国も企業に対してLGBTQに対するハラスメントや差別禁止を求めている。
対応を迫られる国内企業の管理職や人事担当者からは、戸惑いの声があがっている。接し方がわからなかったり、LGBTQの従業員を特別扱いすることが気になったり、社内に好ましく思わない人がいたりと、頭を悩ませているようだ。本書は、こうした悩みに応える形で、ハラスメントを防ぎながら生産性の高い職場づくりを行うためのコミュニケーションの手順を解説している。
著者の宮川直己氏は、LGBTQ当事者のひとりとして多くの当事者や企業担当者のコミュニケーション支援を行なってきた。その経験から、大切なのは、(1)正しい知識を身につけること、(2)相手を人として尊重する意思を言葉と行動で示すこと、(3)丁寧に対話を重ねることの3つだけだという。
誰かを愛することや自分自身の性別をどう認識するかといった性のあり方は、努力で変えることのできない属性だ。それによって差別やハラスメントを受けることのない職場環境を整えることは、なんら特別な権利を与えるものではない。多様な属性の存在が受け入れられる会社は、全ての従業員が安心して能力を発揮できる場にもなる。組織全体の生産性や、業績、優秀な人材の定着など、多方面に良い影響をもたらすことだろう。
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