仕事好きの著者が仕事を嫌いになり、自信をなくしたのは、はじめての育休から復職した後のことだ。これまでと同じように頑張りたいと意欲を燃やしていたところ、大きな壁にぶつかった。
残業はできない。今までと同じ結果を出そうとすると時間が足りず、限られた時間の中でやりくりしようとすると、これまでのような結果が出せない――。そんな状況でも苦しいと言えず、心も体も疲弊していった。そしてあるとき、ぷつりと感情の線が切れ、上司に「もうこれ以上できません」と訴えることとなったのだった。
課題を認識していたのに、なぜ状況を打開できなかったのか。それは、ひとりで抱え込み、時間をかけて仕事をこなすやり方を変えなかったからである。この「『全部ひとりでやらなきゃ』という病」は、誰もが罹る可能性のある、風邪のような病だ。症状が軽いうちに手を打つことも、原因を理解して予防することも可能である。
仕事をしながら歩む人生は長い。持続可能な「仕事のやり方」を身につけることで、ライフステージやキャリアが変わっていっても、「仕事を続けていける(続けたい)」と思えるはずだ。
周りに適切に助けを求めるための第一歩は、助けを求める行動を肯定することだ。ヘルプシーキングは、甘えでも逃げでもない。相互信頼の上に成り立つ「適切な頼り合い」だと心得よう。
何より、ひとりで考えてもがく時間は無駄だ。助けを求めるという迅速な判断と行動は、あなたのためだけでなく、チームのためにもなる。
チームで仕事をする上で重要なことは、仕事が期限通りに正しく終わることだ。「誰が終わらせるか」ではなく「チームとして終わっているか」、「誰の成果か」ではなく「チームとして成果を最大化できたか」のほうが重要なのだ。そのことを理解せず、仕事をひとりで抱え込むと、チームの仕事を停滞させかねない。
これからは「仕事ができる人こそ、ひとりで抱え込まない」という考え方にシフトしよう。仕事を抱え込む人は、チームの成果という観点が欠如し、判断力に乏しく、仲間と連携して仕事をすることが苦手と見なされることさえある。「助けを求めること=自分の駄目さの露呈」と決めつけず、成果のために思い込みを手放そう。
ヘルプシーキングとは、ひとりで抱え込まず、周囲に助けを求めるビジネススキルだ。困ったときに適切に助けを求め、周囲と連携して、ひとりで対応する以上の成果を上げる考え方と技術を指す。ヘルプシーキングを実践することで、仕事を長く、楽しく続けられるようになるだろう。
ヘルプシーキングが会社やチーム全体に浸透すると、効果は増大する。みんなで実践したほうが、成果への影響が大きく、効果的・効率的に助け合えるようになるからだ。「個人スキル」「仕組み」「文化」の3つの要素に目を向けて、ヘルプシーキングが上手なチームを目指そう。
ヘルプシーキングには3つのメリットがある。
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