著者は30年もの間、MIT専門家を主軸とするチームを率いて、世界各地で発生した重大事故の処理を手掛けてきた。単純なヒューマンエラーが、思いがけぬ巨大な損失をもたらしたり、大きな犠牲を払う事態に繋がったりする。恐ろしいことにエラーのほとんどは過去に発生例がある。にもかかわらず、同じ問題が発生し、深刻な死傷事件までもが起きている。
著者らのグループが重要な成功例と失敗例をかきあつめ、ビッグデータ分析を行った結果、成功と失敗を分ける要素は1つしかないことがわかった。それはエラーの数だ。あらゆる危機や事故の背後のすべてに共通する、たった1つの原因は、ヒューマンエラーだ。
ヒューマンエラーを根絶するために著者らはエラーフリー・メソッドを開発した。設備の不具合をなくし、事故や危機を防ぎ、犠牲者をゼロにすることがエラーフリーの目標だ。デカルトの研究方法を応用して作成したエラーフリー思考は、長年磨き上げられ、14のテクノロジー・ポイントに基づくエラー防止策が完成した。エラーフリーを実現することは、決して不可能ではない。
慢心は最も犯しやすいヒューマンエラーの1つだ。慢心のせいで自滅した人や国の例は枚挙にいとまがない。ビジネスの世界でも、成功した企業ほど慢心というエラーを犯しやすい。
かつて世界シェアナンバーワンの携帯電話メーカーであったノキアは、ほんの数年間で業界トップから谷底へ転落した。マイクロソフトによるノキア買収を発表する記者会見でヨルマ・オリラCEO(当時)は「われわれは何の過ちも犯していない。なぜ敗北したのか分からない」と涙した。しかし、実のところノキアは過信により致命的なエラーを犯している。
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