大学4年に再履修したフランス語の授業で、僕は彼女と出会った。変わった子だなという興味はすぐに好意へと変わり、懸命なアプローチの末、僕らは恋人になった。彼女は僕の胸をときめかせ、就活の不安とノイローゼに苦しむ僕を包んでくれもした。
交際1年の記念日を迎える直前、僕はインターンのために渡米することになった。就活に苦戦していた僕に訪れたチャンスを誰もが応援してくれたが、彼女だけが行かないでと言い、僕らは涙にくれた。
出国の日、離れていても心は一つだと誓い合い、空港でキスを交わすはずだった。だけど、彼女はメール一つで「別れよう」と告げてきた。離れていられる自信がないから、と。
アメリカにいた1年の間、多くの女性と付き合ったけれど、愛とか、もうどうでも良かった。あんな一通のメッセージで終わってしまう程度のものなのだから。
帰国して大企業に就職し、3年目になった「僕」ことスンジュンは、知人から紹介された年下の女の子と3回目のデートをしていた。女の子らしく、よく尽くし、子育てもちゃんとやりそうで、セックスも悪くなさそうだ。結婚相手には申し分ない。だけど、思い浮かぶのは終わった初恋のことだった。
これまでも悪くない子はたくさんいた。ほとんどが結婚を望み、周囲も結婚を期待し、僕にも結婚したい気持ちはある。でも、どうにも行動できなかった。なんで「今後の関係」は、男から切り出さなきゃならないんだ?
デートを終え、人通りの多い交差点を歩いていると、若い女性の集団がデモ集会をやっていた。「私の生命が大切だ!」「妊娠中絶合法化!」という横断幕があちこちに見える。
あれが噂に聞く「メガル(韓国でフェミニストを一括りにして揶揄する呼称)」だろうか。男が嫌いすぎて頭がおかしくなった、こじらせまくった女たち。何かにつけては「ハンナム(家父長的で女性を蔑視するミソジニー的な考えの男性を批判する呼称)」と男はみんな犯罪者予備軍かのように罵っているらしい。
とはいえ、僕の周りの女性たちはみんな「まとも」だったから、実際にメガルを見るのははじめてだ。さりげなく覗き見ていると、一人の「メガル女」と目が合った。不気味な黒ずくめの女は近づいて僕の顔をじっと見つめてくる。言いようのない恐ろしさに全速力で駆け出すと、女も追ってくる。人通りを掻き分け、建物に入り、男子トイレに逃げ込もうとしたところで、小さな手が肩に乗った。
「よ、キム・スンジュン。久しぶりじゃん?」
メガル女は彼女だった。4年前、僕を裏切った初恋の人は「メガル」になって現れた。
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