サクッとわかる ビジネス教養 アドラー心理学
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出版社
新星出版社

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出版日
2022年08月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「アドラー心理学」という単語を目にする機会は多くなった。その理論について見聞きしたことがある人はいても、実際に生活に活かしているという人は少ないのではないだろうか。本書によれば、アドラー心理学の創始者であるアルフレッド・アドラーは、自分の心理学が庶民に届くことを願っていたのだという。本書はビジネスパーソンの実生活の悩みを取り上げ、アドラー心理学を応用した具体的な対処法を紹介している。

アドラー心理学を一言で表すならば「勇気」の心理学であるという。勇気というと、意気揚々としたイメージが思い浮かぶが、本書に頻繁に登場する「勇気づけ」は、それとは異なる印象を持つ。人間関係で疲れた自分自身を癒し、周囲の人間を励まし、過去の自分の失敗を受け入れる。変えられない現実を「勇気」をもって受け入れ、変えられることにフォーカスする。こうした「勇気」には勇猛果敢な派手さはないが、日常に取り入れることができれば、心をじわっと温かくしてくれる、しなやかな強さがある。

アドラー心理学に興味を持っていたという方はもちろん、「自信がない」「職場の雰囲気がよくない」「自分の人生が生きられない」といった悩みを抱えている方にも本書をおすすめしたい。アドラー心理学の教えが、あなたが自分の人生の主役として生きるための指針を与えてくれることだろう。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

岩井俊憲(いわい としのり)
1947年栃木県生まれ。早稲田大学卒。有限会社ヒューマン・ギルド代表取締役、ハリウッド大学院大学客員教授、アドラー心理学カウンセリング指導者、中小企業診断士。
外資系企業の管理職などを経て、1985 年に有限会社ヒューマン・ギルドを設立。同社にてカウンセリング、カウンセラー養成や公開講座を行うほか、企業・自治体・学校等での講演、カウンセリング・マインド研修、勇気づけ研修、リーダーシップ研修など多岐に渡り、その受講者は延べ20 万人を超える。
著書に『マンガでやさしくわかるアドラー心理学』シリーズ(日本能率協会マネジメントセンター)、『人生が大きく変わる アドラー心理学入門』(かんき出版)、『人を育てるアドラー心理学』(青春出版社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    アドラー心理学の理論は、「自己決定論」「目的論」「全体論」「認知論」「対人関係論」の5つの要素にまとめることができる。
  • 要点
    2
    アドラー心理学でいう「勇気づけ」とは、困難を克服する活力を与えることだ。仲間とのつながりや絆の感覚である「共同体感覚」をお互いに持っていると、勇気づけが生まれやすくなる。
  • 要点
    3
    悩みごとがあるときは、その悩みが「仕事」「交友」「愛」のどれに属しているかを考え、悩みを切り分けるとよい。
  • 要点
    4
    自分の性格は自分で変えることができる。キーワードは「前向きな自己決定」だ。

要約

【必読ポイント!】 アドラー心理学の柱は「勇気」

アドラー心理学の5つの要素
lemono/gettyimages

1870年にウィーン郊外でユダヤ人の家系に生まれたアルフレッド・アドラーは、病弱な幼少期に父親の「勇気づけ」によって身体の障害、劣等感と健全に向き合う術を見つける。その後精神科医となり、独自の心理学の道を切り開いた。アドラーは劣等感や優越感への意志を重視し、自身の心理学を「個人心理学」と称した。

アドラーの打ち立てた理論は、5つの要素にまとめられる。1つめは、その人の生き方を決めるのは環境や過去ではなく、自分の意思だという「自己決定論」だ。運命の主人公は自分だ。2つめの要素は、人間は未来の目的のために行動するという「目的論」という考えだ。これは、人間の行動や感情には「原因」があるとする「原因論」とは真逆の考え方である。3つめは、人は心と体、理性と感情のように部分に分けることはできないと考える「全体論」だ。人は必ず全体でとらえなければならない。4つめは、人は世の中の出来事を自分の考え方を通して理解し、意味づけ、行動すると考える「認知論」だ。人は自分だけの心のメガネを通して世界を見ているのだ。5つめは、人は「特定の誰か」を想定して行動していると考える「対人関係論」だ。人の行動には必ず「相手役」がいて、その存在が行動に影響を与えるのである。

アドラー心理学では、他者の行動から自分が影響を受けると同時に、自分の行動も相手に影響を与えると考える。ならば、人間関係の悩みは、自分の行動を変えることで解決することができる。人間関係を築く4つの要素として「共感」「信頼」「尊敬」「協力」の4つの要素が挙げられる。行動のベースになるのは、相手への「共感」だ。共感の姿勢は相手に肯定感をもたらし、精神的な距離を縮めることができる。そのためには、相手の行動や善意をまず「信頼」することだ。相手を信頼して良いところを探してみると、「尊敬」し合う関係性につながる。こうした相互尊敬のある組織は、目的を共有し課題の解決に取り組む「協力」が多く生まれる。

疲れ果てた人の元気を取り戻す処方箋

アドラー心理学でいう「勇気づけ」とは、困難を克服する活力を与えることだ。良い・悪いという評価的な態度をベースとする「ほめる」こととは異なり、相互を尊敬・信頼し合う平等な関係性に基づいた共感的な態度が必須だ。仲間とのつながりや絆の感覚である「共同体感覚」をお互いに持っていると、勇気づけが生まれやすくなる。

効率や生産性を重視する現代、心は疲れやすくなっている。不慣れなことの繰り返しや、個人の作業負担の増加、刺激のない日常の繰り返しなど、疲れ果てた人の元気を取り戻すには「勇気づけ」が重要だ。

勇気づけの方法は5パターンだ。1つめは相手の良かった点を伝える「ヨイ出し」だ。ダメ出しをされると人は行動をためらうようになる。ヨイ出しをすれば、相手の自主的な行動を促すことができる。

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要約公開日 2022.10.11
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