仕事は人生の糧だから、楽しくなければ意味がない。仕事をエンジョイするために欠かせないのが整理術である。整理術を磨いていくと、仕事を取り巻く環境がみるみる快適になると同時に、仕事の精度も劇的にアップするのだ。
ここでいう整理術とは、整理のための整理ではなく、快適に生きるための本質的な方法論である。デスク周りなどの空間から仕事上の問題、人間関係に至るまで、あらゆる場面に応用できるものだ。
仕事上の整理のプロセスは、「状況把握」「視点導入」「課題設定」の3ステップで行われる。この順序で進めれば、問題の本質をきちんと捉えて対処できるはずだ。
まず「状況把握」は、クライアントを問診し、現在置かれている状況を把握するとともに、問題点や重要な点を浮かび上がらせるプロセスだ。相手ときめ細やかに言葉を交わしながら、状況をひもといていく。
ここでは、いかにリアリティを引き出せるかがポイントとなる。医者の問診では、「お腹が痛い」で済ませるのではなく、どこが痛いのか、どのように痛いのかを聞いたり、実際に手を当てたりして、五感で状態を汲み取るはずだ。同様にビジネスの問診でも、人間の感覚を駆使して微妙なニュアンスまで汲み取ることが大切である。
次は「視点導入」だ。ある視点を持ち込み、情報を並び替えたりいらないものを捨てたりすることで、問題の本質を突き止める。
キリンの発泡酒「極生」の商品開発では、発泡酒のマイナスイメージがどこから来るのかを突き止めるために、マクロな視点で発泡酒全体を見渡した。すると、無理にビールに似せようとしていたことがすべての原因、つまり問題の本質だと気づいたのだった。
最後の「課題設定」のプロセスでは、問題解決のためにクリアすべき課題を設定する。
「極生」の場合、視点導入によって、「ビールらしく見せること」ではなく「発泡酒独自のポジティブな立ち位置を築くこと」が最重要課題だと確信し、進むべき道が見えてきた。そこで、発泡酒のイメージを「ビールの廉価版」ではなく「カジュアルに楽しめる現代的な飲み物」に、「コクが足りない」のではなく「ライトで爽やかな飲み口」と捉えなおした。ビールの真似という視点ではネガティブな要素だったものが、裏を返せば立派なアピールポイントになったのだ。かくして「極生」はヒット商品となった。
具体的な整理術として、まずは空間の整理、つまり机周りやPC、オフィスなどをすっきりさせることから始めよう。整理の効能を体感すると、情報の整理、思考の整理へと進みやすくなるからだ。
空間を整理するメリットは、すっきりと気持ちのいい空間で効率的に仕事ができることだ。把握していないものがなくなり、仕事が円滑に進むだけでなく、リスク回避にもつながる。
空間の整理は「アイテムを並べてみる」「プライオリティをつける」「いらないものを捨てる」の順序で行うとよい。重要なのはプライオリティをつけることだ。プライオリティが決まれば、捨てる判断がしやすくなる。
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